GNスクエア探究学習と調査で学んだドイツのデポジット制度「プファンド」について
2025年06月16日グローバルネット2025年6月号
令和7年度ハンブルグ日本人学校小学部6年生一同
日本の皆さん、こんにちは。私たちはドイツのハンブルクにあるハンブルグ日本人学校の小学部5年生(現在は6年生になりました)です。都市の名前は、ハンブル“ク”ですが、学校名はハンブル“グ”といいます。少し不思議ですよね。
ハンブルクは、ドイツの北部に位置していて、日本よりも緯度が高く、とても寒い場所にあります。夏と冬では日照時間の差が大きく、曇りや雨の日がとても多いです。日本とは環境が大きく違う場所ですが、みんなで楽しく学校生活を送っています。今回、私たちが1年をかけて学んできたことを紹介します。
私たちは、小学部5年生のときに探究学習として、ドイツのデポジット制度である「プファンド(ドイツ語表記は、Pfand)」について調査してきました。なぜプファンドを調べることになったかを説明します。
はじめに日本とドイツのさまざまな違いを調べました。その中で、日本の良いところやドイツの良いところをたくさん見つけることができました。その中で、ドイツの環境保護に対する意識の高さに注目し、プファンドについてより詳しく学んでいくことにしました。
●ドイツ人の生活の一部になっている「プファンド」
それでは、ドイツのプファンドについて説明します。ドイツでは、ペットボトルなどを購入するときに預かり金が上乗せされた値段で購入します。そして、ペットボトルをお店に返却するときに、その預かり金が返ってくるという仕組みです。その後、回収されたペットボトルは、衣服や自動車のパーツなどに再利用されます。ドイツ国内のスーパーマーケットなどの小売店には、ほぼ全てのお店にプファンド回収機が設置されていて、お店が開いていればいつでも誰でも利用できる状況です。また、サッカースタジアムやクリスマスマーケットなどのイベント会場で提供される飲み物などの器にもプファンドが適用されています。プファンドは、ドイツの人たちにとって生活の一部で、ごく自然なことになっているのだと思いました。
また、私たちはドイツの人たちの生活にプファンドがどのくらい根付いているのか、プファンドに対してどのような意見をもっているのか調査するために、
実際にハンブルクの街へ出て、街頭調査を行いました。学校で勉強しているドイツ語と英語を使って、約70人の現地の人たちに直接アンケートを行いました(写真)。

写真:英語とドイツ語を使って現地の人たちにアンケート調査
その結果、90%以上の人がプファンドの制度を利用していることがわかりました。そして、利用している人のうち、プファンドに賛成する意見が大多数でした。その中でも、「環境に優しいから」や「ごみを減らせるから」など環境のことを考えて、プファンドを利用している方が多いことがわかりました。このように、プファンドはドイツの人たちの生活の一部になっていて、プファンドを利用することが自然なことであり、多くの人は環境保護に対する意識を持って、前向きにプファンドを利用していることが、街頭調査の結果から、わかりました。
●意外だった日本の事例や環境意識の高さ
プファンドについて詳しく調べていく中で、プファンドに携わる企業や団体などからも直接話を聞いてみたいと思った私たちは、ドイツや日本の企業・団体に連絡をしてみました。その中で、日本の国立環境研究所資源循環社会システム研究室の田崎智宏室長と地球・人間環境フォーラムの天野さん、新堂さんとリモートでインタビューさせていただくことができました。3名の方とのリモート授業は、私たちにとって学びの多い時間となりました。
田崎室長からは、私たちだけではわからなかったプファンドの仕組みや制度について教えていただきました。中でも驚いたことは、日本でもいくつかの自治体でデポジット制度を取り入れていることやポイントカードでポイントを貯めるデポジット制度があったことです。また、飲料容器以外にもデポジットの対象となる物が多くあることがわかりました。
地球・人間環境フォーラムの天野さん、新堂さんからは、日本国内でもサッカーの試合会場などで使用されるリユース容器にデポジット制度が導入されていることを教えていただきました。最も驚いたことは、日本のペットボトルごみの回収率が非常に高いということです。日本では、デポジット制度を利用していなくても高い回収率を保てていることがわかりました。それだけ、日本もドイツと同じように環境保護への意識が高いのだと思いました。
●日本でプファンドを導入するために
私たちは、プファンドについて探究学習を進めるときに大きなテーマを決めていました。それは、「ドイツの良いところを学んで、日本をより良くしよう」です。学習を進める中で、ドイツのプファンドを日本に導入できないか考えてきました。そうした中で、日本のペットボトルごみの回収率が高いのであれば、プファンドを導入する必要がないのではないか?と考えたこともありました。しかし、日本の回収率は100%ではありません。また、田崎室長からは回収できていないプラスチックが海に捨てられて、海の生態系を破壊してしまうことについても教えていただきました。やはり、プラスチックごみの回収率をさらに高いものにして、環境を守るために日本もプファンド制度を導入すべきだろうと5年生全員で決めました。
その後、私たちは日本にプファンドを導入するために、どのような方法があるか考えました。しかし、新しい制度を日本に導入しようとすることは、簡単なことではありません。越えなければいけない壁がたくさんあります。私たち小学部5年生だけでは越えられないこともわかっています。そこで、自分たちにできることは何か、もう一度話し合いました。その結果、自分たちがこれまで学習してきたことを日本に向けて発信すること。そして、この記事を読んでくれた日本の人たちの意識が少しでも環境に向いてくれること。これが、環境保護に向けて自分たちができること、日本にプファンドを導入するための第一歩だという結論になりました。
この記事を読んでくださり、本当にありがとうございます。読者の皆さんが少しでも環境を守ろうとする気持ちが強くなってくれたらうれしいです。
最後に、私たちのためにお忙しい中、時間をつくってくださった、田崎室長、天野さん、新堂さん、皆さんのおかげで、ここまで学習を進めることができました。本当にありがとうございました。