フロント/話題と人ポーシャ・シェパードさん(非営利団体BlackBelt Women Rising代表)
2025年11月18日グローバルネット2025年11月号
日本の「再エネ」が引き起こす環境汚染
~燃料生産地で闘うコミュニティの代表が来日~

ポーシャ・シェパードさん
(非営利団体BlackBelt Women Rising代表)
再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の下、日本で急拡大したバイオマス発電。全体の約7割で海外からの輸入燃料が燃やされており、近年、日本への木質ペレットの輸出が急増したのが米国南東部だ。今年9月、ペレットの生産地で起きている問題を伝えるために、シェパードさんはコミュニティの代表として現地NGOと共に来日した。
シェパードさんが生まれ育ったアラバマ州ユニオンタウンは人口約2,000人、住民の9割がアフリカ系で、半数が貧困ライン以下で暮らす。市内にある石炭灰(石炭火力発電所等で発生する灰)の埋め立て地で発生するばい煙や有害物質が健康被害を引き起こしてきた、典型的な「環境不正義」の地だ。シェパードさんは2019年にBlackBelt Women Risingを創設。一帯の7つの郡で、家庭内暴力・性的暴行の予防教育や被害を受けた住民の支援、ジェンダー平等や環境汚染の解決に向けた権利擁護・政策提言を行ってきた。
木質ペレットの問題には、近隣で最初にペレット工場の建設計画が浮上した2022年から、コミュニティへの普及啓発や反対運動の支援に取り組んでいる。米国南東部のペレット工場の多くが、貧困率が高く、人種的マイノリティの割合が高い地域に立地している。現地NGOの調査では、多くの工場で大気汚染物質が基準を超えて排出され、近隣住民がぜんそくや目・鼻の炎症といった健康被害、工場の騒音や粉じんに悩まされていることが明らかになっている。
シェパードさんは、隣町で日本向けの輸出を企図した工場が計画されたとき、大気汚染の正確な把握を目的に、建設に先んじて町議会と大学の研究所と連携し、大気質の調査プロジェクトを立ち上げた。こうした運動が抑止力となり、同工場は今も稼働の延期が続く。
東京で開かれたセミナーでシェパードさんは、「現地のペレット産業は日本に依存している。私たちのコミュニティを汚染から守るために、日本の皆さんの力が必要です。ペレット製造企業に対して対策を徹底し、地域社会の汚染をやめるよう求めてほしい」と力強く呼びかけた。参加者からは「電気を使う日本人として責任を痛感した」との感想が複数寄せられた。(克)
