フロント/話題と人 山本 愛さん(一般社団法人「最愛の食卓」事務局長・理事)

2025年12月17日グローバルネット2025年12月号

料理を“お裾分け”する「かんしょくプロジェクト」
食品ロスを削減し、社会課題も解決!

山本 愛(やまもと あい)さん
一般社団法人「最愛の食卓」事務局長・理事

日本では、まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」は年間464万t(2023年度推計)。これまでは規格外品や保存食品を使ったロス削減が進められてきたが、調理済みの温かい料理を無料で提供するという日本初の取り組み、「かんしょくプロジェクト」が都内で展開している。山本さんはこの事業を運営する一般社団法人「最愛の食卓」の事務局長だ。

「かんしょくプロジェクト」では、企業の社員食堂などから余った料理を回収・運搬し、提供する。今年2月からは都内の公社住宅で週1回、20人前後の住民が提供を受けている。事前に申し込み、会場の集会室に集まった参加者は、学校給食のように2、3種類のおかずや汁物をよそってもらい、皆で食卓を囲む。

山本さんは現在、企業のほか、レストランやホテルなど料理の提供者拡大を目指しているが、食品の安全・衛生面に厳しい日本では「調理済み料理の提供はリスクが高い」という声もあるという。これに対し、本事業では厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」に基づき基準温度を65℃に設定。提供された料理を提供元の厨房から保温できる食缶に移し、運搬する前後に65℃以上を保っているか検温する。さらに調理完了から2時間以内に食べ終わるようにしている。「これは始動前に半年かけたルール作りや20回ものトライアルで確立した手法。食べ終わるまで管理しているのでリスクは低い」と山本さんは胸を張る。

「かんしょく」には、全部食べ切る「完食」、地球環境にやさしい「環食」、感謝を込めて絆も深める「感謝食」の3つの意味が込められている。前述の公社住宅は住人の約8割が高齢者。週1回の自宅以外での「外食」を楽しみにしている高齢の参加者も多く、「孤食」の解消や居場所づくりにもなっているという。

最近はNGO等と連携し、都内で暮らす難民や食料支援が必要な人を対象とした提供もスタート。「社員食堂の食品ロスを減らして社会貢献もしたい」という地方の企業とも前向きな計画が進んでいる。

「食べ切れない料理を、必要としている人に“お裾分け”して喜んでもらうという概念を全国に広げていきたい」と山本さんは今後の展望に目を輝かせた。(絵)

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