NSCニュース No. 159 2026年1月定例勉強会報告「NGFSシナリオによる気候関連金融リスクのシナリオ分析~長期シナリオと短期シナリオの特徴~」
2026年01月15日グローバルネット2026年1月号
NSC共同代表幹事
後藤 敏彦(ごとう としひこ)
NSC定例研究会にて、表題について日本銀行金融機構局竹山梓・小野崎歩の両氏に講演願った。
講演をお願いした趣旨はNGFS(Network for Greening the Financial System、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)が2025年4月に短期シナリオを公表したのでその内容や背景を知りたいということがある。同時に、気候変動対応にさまざまな逆風が強い昨今、世界の財政当局や中央銀行が考えていることはさまざまな金融イニシアチブのベースになると推察したからである。なお、NGFSは11月には長期シナリオに関する解説資料の公表もしている(金融庁 https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20251112/20251112.html)。以下、講演資料抜粋。
NGFSとは
気候関連金融リスクの金融監督上の対応を検討する中央銀行・金融監督当局のプラットフォームとして2017年12月のOne Planet Summitにおいて設立合意。日本は金融庁が2019年、日本銀行が2020年に加盟、設立時メンバーは、英仏蘭独中国等の8機関。2025年7月時点で147機関が加盟し、23の国際機関等がオブザーバーとして参加(米当局からは6機関が加盟していたが、2025年1月以降、4機関が脱退)。金融安定化理事会やバーゼル銀行監督委員会などの基準設定主体からは独立した組織である。
NGFSの短期シナリオの経緯
NGFSの長期のシナリオの下で金融各行が金融システム・金融機関経営への影響の試算に利用してきている。しかしNGFSが実施したサーベイ、金融庁・日本銀行が公表した第1回シナリオ分析を通じて、NGFSシナリオを用いたシナリオ分析の監督実務やリスク管理への活用に向けた課題が確認された。そこでNGFSは2023年11月に「短期シナリオに関する概念整理ノート(Conceptual Notes)」を公表し、短期シナリオの開発に着手、25年5月に4つのシナリオを収録した短期シナリオを公表した。
NGFS短期シナリオ
- 長期シナリオとの整合性も意識しつつ、短期的に想定されるリスクを反映したシナリオを作成
- 移行リスク・物理的リスクの両面でストレスの度合いが異なるシナリオを提供
- ストレステストへの活用を意識し、ベースラインシナリオの想定を見直し
- 業種別情報(GDP、デフォルト確率、設備投資など)を拡充
NGFS長期シナリオと短期シナリオの特徴の比較
・長期シナリオ:
パリ協定に基づく取り組みは、少なくとも2050年まで続くとみられるため、長期にわたる影響の評価が必要。
・短期シナリオ:
短期で顕在化するリスクへの着目(通常の景気後退等の影響との複合的な評価)。
それぞれの強みを補完し合うことで、シナリオ分析に求められる次の4つの役割に対応する。リスクの特定/リスク管理プロセス/資本・流動性の充実度検証/ビジネスモデルの頑健性評価と戦略構築。
なお、基本想定・作成方法、および、気候関連金融リスクの影響、更にはNGFSシナリオの活用等について詳細に解説いただいたが、NSCのWEBにある講演資料を参照願う。
まとめと今後の展望
- 物理的リスク・移行リスクともに、長期の時間軸によるリスクの全体像の把握とより短期の時間軸による具体的な意思決定のための詳細な分析はともに重要(複数の時間軸による分析)。
- 国・地域・企業により重要なリスクは異なる。このため、公表されているシナリオは、必ずしもリスク分析上重要なリスクの波及経路を網羅しているとは限らない(共通シナリオの充実とユーザーによるカスタマイズ)。
- 物理的リスクについても実際に企業が直面するであろうリスクを把握するための枠組みなどの検討も必要か。
おわりに
今回はテーマからして視聴者は金融関係が圧倒的に多かった。いずれにせよ、金融機関や企業は実際に戦略に活用するにはこうしたシナリオ分析の活用だけではなく、自社でのシナリオ(プランニング)分析も必要になるが相応の専門知識を要する課題である。
