環境の本・トラ学のすすめ~アムールトラが教える地球環境の危機
・環境年表 2019-2020

2019年03月15日グローバルネット2019年3月号

トラ学のすすめ ~アムールトラが教える地球環境の危機

著●関 啓子

著者は一橋大学の名誉教授で社会学の博士、ノンフィクション作家という肩書なので、ここで言う「トラ学」は、トラの生態について研究したものではない。アムールトラ自体はもちろん、飼育員、動物園のお客さん、先住民など関わりのある人びとに対する愛情があふれているドキュメント。

社会学者らしく「野生動物と人間の関係は、人間どうしの関係を合わせ鏡としなくては見えてこないようです」と述べ、人間界の不平等が野生動物の激減につながっていると指摘している。著者のやさしいまなざしからアムールトラの深刻な危機が伝わってくる。(三冬社、1,800円+税)

 

 

 

 


環境年表 2019―2020

編●国立天文台

524ページのうち、ほとんどが図やグラフ、数字で埋まった年表。データや経年変化から時代の問題点をくみ取ってもらうのが狙いの理科年表シリーズの第6冊。地球環境問題、気象、酸性雨、水循環、陸水・海洋環境、火山、生物多様性といった地球上の自然環境や太陽活動、地球接近天体といった宇宙の変化のほか、エネルギー、廃棄物、農作物といった身近なテーマについても豊富なデータが掲載されている。

データとはいえ、気象庁の観測船による北西太平洋の大気・海水中の二酸化炭素の測定濃度のグラフを見ていると、右肩上がりの上昇ぶりが、ただならぬ温暖化の進行を雄弁に語り掛けてくる。(丸善出版、1,800円+税)

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