フロント/話題と人炭谷 茂(すみたに しげる)
地球・人間環境フォーラム理事長

2016年01月15日グローバルネット2016年1月号

パリ協定採択後のこれから

明けましておめでとうございます。今年も地球・人間環境フォーラムに対するご支援をよろしくお願い致します。

炭谷 茂

昨年12月12日、パリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、新たな温暖化対策の世界的枠組みを決める「パリ協定」が全会一致で採択された。

パリ協定は、世界最大の温室効果ガス排出国であるアメリカと中国を含め、すべての国が目標を作成・報告して削減を行うことが義務化されたことが最大の成果である。しかし、京都議定書のように罰則付きで目標の達成が法的に義務化されるまでにはならなかった点では、不満であるが、すべての国の参加を得るには、やむを得ない妥協だったのだろう。

パリ協定の使命は、具体的な実効性を持つことができるかである。各国が温室効果ガスの削減の達成に真剣に努力し、成果を残すのか、厳重に見守っていかなければならない。努力を怠っている国に対しては、国境を越えて警告・抗議していかなければならない。

途上国は、温室効果ガスの削減義務を負うことになったが、パリ協定では先進国からの途上国支援が定められたことも重要な点だ。オバマ大統領は、COP21の会議の初日に「ミッション・イノベーション」と称する計画を発表した。これにはアメリカのほか日本、欧州7ヵ国、中国など20ヵ国が参加するが、これらの国で開発されたクリーンエネルギー技術を途上国に提供する計画である。これは途上国での環境と経済の両者の向上に有益に働くだろう。

日本各地では多数の住民団体が、クリーンエネルギーの活用で成果を上げている。例えば、風力発電、木質バイオマス、小水力発電などがある。途上国の経済や人的条件では、大企業による最新の大型設備よりもこれらの活用が現実的である。

私は、個人的に廃アルミ、下水汚泥、医療施設・福祉施設の廃棄物、家畜排出物などの廃棄物をエネルギーとして活用する事業を進めている。国内で成果を出し始めている。これらの廃棄物は、途上国でも大量に発生して、処理に困っている。15年前にモンゴルに出張した時は、ごみの山に驚かされた。

これらの廃棄物がエネルギーに利用できれば、地球温暖化防止、エネルギーの確保、環境衛生などを同時に達成できる。私たちが開発している技術は、操作が簡単、設備費も高額ではない。途上国での活用を視野に入れ、開発を急いでいる。

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