世界のこんなところで頑張ってる!~公益信託地球環境日本基金が応援する団体第19回/モザンビーク共和国ペンバでの環境美化プロジェクト~青年美化隊によるごみ拾い活動

2017年01月15日グローバルネット2017年1月号

NGOモザンビークのいのちをつなぐ会 代表 榎本 恵(えのもと めぐみ)

コレラや感染症による死者がいまだ発生するペンバ

アフリカの南東に位置するモザンビーク共和国。サブサハラ(サハラ砂漠より南の地域)における日本のODA援助実績4位※1と高順位にも関わらず、アフリカでも数少ないポルトガル語圏という言語の壁もありNGOの参入が非常に少なく、公共インフラ、環境、教育、農業など、改善急務な課題が山積みになっている貧困国の一つである。

当会モザンビーク事務局は、モザンビーク南部にある首都マプトから飛行機で2時間半の位置にある、北部の町ペンバ市中心部のスラム、ナティティ地区にある。ペンバ市の人口約15万人のうち、ナティティ地区の人口は約2万人である。

2013年、私がこの地区に住み始めて一番驚いたことは、至る所にごみが散乱し、不衛生な環境に住民が慣れていて、何も手を打っていないことであった。現地はいまだ雨季になるとコレラによる死者が発生しており、5歳以下の乳幼児死亡率は18%※2。5.5人に1人の乳幼児が5歳の誕生日を迎えることができない。その主な原因はウイルスや細菌感染症である。

スラムの青年で美化隊を結成

写真①:青年美化隊による清掃活動

当会では2015年度より地球環境日本基金の助成を受けて、ペンバ市で初めて青年美化隊を結成し、ごみの散乱が著しいナティティ地区を中心に清掃活動を実施している(写真①)

モザンビークは独立戦争後、1992年に停戦した内戦の影響もあり、他人に対する不信感が強い土地である。こちら側が真摯な気持ちで、粘り強く関わっていかなければ会の持続は難しく、安全上のリスクも増すことは覚悟していたので、信頼できる一人をコアにして、常にNGO活動の考え方やお金の流れ、活動計画を話し合い、一つひとつの活動を地道に行ってきた。

 

写真②:会で建設したスラムの学舎・寺子屋

NGO活動や社会貢献活動にまったく触れたことがないスラムの青年たちと美化隊を結成できた背景には、まず信頼できるコアメンバーがいたことと、当会が2013年の設立当初から開始したスラムの学舎・寺子屋(写真②)の建築、教育活動が大きな力となっている。スラムの学舎・寺子屋の建築や設備の整備では近所の青年や職人さんとともに汗を流し、彼らに少しでもお金を渡せるようやりくりし、形にしている。また金銭面だけでなく、生き方や将来、人生についての話も事あるごとに膝を突き合わせて談話してきた。そのかいもあって、スラムの青年たちと徐々に信頼関係が深まり、その輪も広がってきた。彼らにともに働く喜びと道徳観が身に付き、ごみ拾い活動を開始する際にもスムーズに9名の青年美化隊を結成することが可能となった。

失業している人、仕事を持っている人、大家族で住んでいる人、家族がいない人。生活環境は違えども、一緒に同じ目的を目指して事を行うことで、協力し合い一体感のある美化活動へとつながった。力を貸してくれているスラムのご近所さんたちに感謝の思いでいっぱいである。

啓蒙活動はクリーンアップソングで

美化活動のスローガンは「自分の町を自分たちできれいにしよう!」。ポイ捨てゼロをビジョンに活動を展開しており、仕組みの一番のポイントは音楽を使って啓蒙すること。

アフリカを訪れたことがある人はぴんとくると思うが、現地の暮らしは音楽とともにある。朝から晩まで常にどこかの家で音楽が鳴っており、お祭りや儀式にも音楽は欠かせない。加えて、識字率が低く、ペンバではマコンデ語を話すマコンデ族とマクワ語を話すマクワ族がおり、ポルトガル語を話せない人も多い。よって、啓蒙活動を行うには音楽が非常に有効なのである。

写真③:行政のクリスマスパーティーでもクリーンアップソングで盛り上げる

当会を支える有志でもある人気ミュージシャンが作詞・作曲したクリーンアップ啓蒙ソングは「私たちの町を私たちできれいにしよう。ごみのないきれいな町に私たちで変えていこう」というもの。ポルトガル語、マコンデ語、マクワ語で歌い、ごみの散乱する中で、ビーチの野外フェスティバルや行政のクリスマスパーティーなどの会場で啓蒙活動を行った(写真③)

クリーンアップソングを一回聴いただけで、音楽に合わせて踊り出し、一緒に歌い出す子供や青年たちも多く、音楽を用いた啓蒙は予想以上の効果を発揮した。

ごみ拾いをきっかけに人生を切り開く力を養う

ごみ拾い実践活動では、ごみが山積する川(雨季にのみ雨水が流れ、乾季はごみためとなっている)を中心に、多くの人が集まる美しいビーチでもごみ拾い活動を行い、ビーチでのごみ拾い活動では行政の清掃チームと協力できた。行政は、外国人が多く訪れる観光スポットのビーチを重点的に年に数回、ごみの片付けを行っている。

回収したごみはペンバ市に唯一ある焼却場へ運んだ。焼却場といっても施設があるわけでなく野焼き状態で、持ち込まれたごみを販売目的で二次利用する人たちも多く訪れている。驚いたことに、レストランの食品残渣まで拾って、再度調理し、販売する人たちもいる。

さて、我らが青年美化隊は、家庭の美化活動や、いつも丁寧に清掃をしている家庭を表彰するクリーンアップコンテストも実施。

住民のやる気も芽生え、美化が少しは根付いた実感があった反面、「何でごみがあったら駄目なのか?」という質問も住民から挙がっていた。不衛生にしていると疾病リスクが高まることを理解していない人が思った以上に多く、今期はより具体的に美化の必要性を啓蒙しつつ、実践活動を行う作戦を立てている。

まだスタートしたばかりの美化活動。根気強く続けていけば、きっと住民みんなの意識が変わり、町がきれいになるだけではなく、想像力や創造力、共創力を得るきっかけとなり、一人ひとりが未来を切り開く力を養っていくと信じている。この言葉とともに。

思いの種をまき、行動を刈り取り、
行動の種をまいて、習慣を刈り取る。
習慣の種をまき、人格を刈り取り、
人格の種をまいて、人生を刈り取る。

サミュエル・スマイルズ著『自助論』より

※1 『2015 年版開発協力白書』サブサハラ・アフリカ地域における日本の援助実績2014 年
※2 Multiple Indicator Cluster Surve (MICS)2008

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