フロント/話題と人ジル・アッペルさん
市民グループ「コンコード・オン・タップ」キャンペーン・マネジャー

2017年04月15日グローバルネット2017年4月号

ペットボトル飲料水の販売禁止を全米で初めて条例化
「脱使い捨て社会」の実現に挑む

米国マサチューセッツ州の町コンコードで2013年、全米で初めてペットボトル入り飲料水の販売禁止が条例化された。この運動で中心的な役割を果たしたのがアッペルさん。2010年、年に一回開かれる町民議会で、たった一人で「ペットボトル販売禁止」を訴えた当時82歳の女性の熱意に心を打たれ、彼女を支援することを決め、ともに運動を始めた。

ジル・アッペルさん
(市民グループ「コンコード・オン・タップ」
キャンペーン・マネジャー)

町民議会での請願は、最低10人の署名を集めると議案となり、出席した町民の投票による多数決で採択後、さらに州の司法長官の承認を得られれば条例として施行される。この女性の請願は業界の強い反対に遭いながらも、提案3回目でようやく条例化にこぎつけた。規制の対象となるのは1リットル以下のペットボトルに入った、味の付いていない非炭酸飲料水だ。

大学で会計学を学び、公衆衛生学の修士号も持つアッペルさんは、以前は生命保険会社で働いていたが、地域のコミュニティーで社会的な活動をしようと「個人的な挑戦」を始めることを決意し、会社を辞め、この運動に関わるようになったという。

運動を進める上で最も苦しんだのは業界団体との闘い。資金力のある彼らは町民に対し、電話や手紙でペットボトルの良さを訴えるキャンペーンを大々的に展開した。これに対しアッペルさんたちは、ペットボトルがもたらす環境や社会面の影響などについて正しい情報を伝え、代替案も提示しながら、「正直なキャンペーン」で対抗しようと努めたという。実際、米国では、環境への影響のほか、安全性や価格の高さを理由に、ニューヨーク市など100以上の自治体で、公費によるペットボトル入り飲料水の調達が禁止されるなど、脱ペットボトルの動きが広がっている。

今回、使い捨て飲料容器削減と水道水の飲用を推進するNGOの水Do!ネットワークが主催するシンポジウムに招かれ来日した(編集部注:6月号の特集で詳しくお伝えします)。水の話をするときはいつも水色の服を着るというアッペルさん。シンポジウムでも鮮やかな水色のセーターに身を包み、「日本には豊かな水資源と先進的な水システムがある。ペットボトルなどごみの削減や再利用について考え、水道水を見直してみてください」と熱く訴えた。 (絵)

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