INSIDE CHINA 現地滞在レポート~内側から見た中国最新環境事情第41回/エネルギー発展 第13次5ヵ年計画

2017年04月15日グローバルネット2017年4月号

地球環境研究戦略機関(IGES)北京事務所長
 小柳 秀明(こやなぎ ひであき)

第12次5ヵ年計画期エネルギー発展の主な成果

ちょっと前になるが国家発展改革委員会(NDRC)および国家エネルギー局の連名でエネルギー発展第13次5ヵ年計画が通知された(通知日は昨年12月26日、発表日は今年1月17日)。国家エネルギー局はNDRCに属する外局である。日本でいえば、経済産業省と資源エネルギー庁との関係に近い。

この5ヵ年計画では、まず第12次5ヵ年計画期間中の成果について述べている。主な成果は表1のとおりだが、幾つかの特徴を紹介すると次のとおりである。

表1 第12次 5ヵ年計画期エネルギー発展の主な成果
指標 単位 2010年 2015年 年平均成長率
一次エネルギー生産量 億トン 31.2 36.2 3%
その内:石炭 億トン 34.3 37.5 1.8%
非化石エネルギー 億トン 3.2 5.2 10.2%
エネルギー消費総量 億トン 36.1 43 3.6%
エネルギー消費構造
その内:石炭 69.2 64 [-5.2]
            石油 17.4 18.1 [0.7]
            天然ガス 4 5.9 [1.9]
            非化石エネルギー 9.4 12 [2.6]

[ ]内は5年累計値
*は標準炭換算量

1.エネルギー供給保障を強化

エネルギー生産総量、電力設備容量および発電量は世界第一位で、長年の供給保障圧力も緩和した。エネルギーの貯蔵輸送能力は著しく増強し、石油・天然ガス幹線パイプラインの総延長は7.3万㎞から11.2万㎞に増加、220kW以上の送電線の総延長は60万㎞を突破、西電東送(注:西部地域で発電した電力を東部地域に送る)能力は1.4億kWに達し、資源の地域横断最適配置能力が大幅に向上した。

2.構造調整のペースが加速

非化石エネルギーと天然ガスの消費比率はそれぞれ2.6、1.9ポイント上昇し、石炭消費比率は5.2ポイント低下し、エネルギークリーン化のペースが絶え間なく加速した。

3.省エネ・汚染物質排出削減の成果が顕著

単位GDP当たりのエネルギー消費および二酸化炭素(CO2)排出量はそれぞれ18.4%低下、20%以上低下し、計画目標(それぞれ16%、17%)を超過達成した。現役石炭火力発電設備の脱硫が全面的に実現し、脱硝設備比率が92%に達し、電力kWh当たり石炭消費が標準炭換算で18g低下し、石炭火力発電設備超低濃度排出と省エネ改造プロジェクトが全面的にスタートした。

第13次5ヵ年計画期に直面する課題

一方、第13次5ヵ年計画期間中に抱える課題として次のような課題を挙げている。

1.従来型エネルギー生産能力の構造的過剰問題

石炭生産能力が過剰で需給が著しく不均衡である。石炭火力発電設備の平均利用時間は短く、しかもさらに低下傾向にあり、設備利用効率の低下、エネルギーと汚染物質排出レベルの大幅増加を招いている。原油の一次加工能力は過剰で生産能力利用率は70%未満であるが、高品質でクリーンな石油製品の生産能力は不足している。

2.再生可能エネルギー発展は多重ボトルネックに直面

再生可能エネルギー全量買取保証政策はまだ有効に実施されていない。電力系統のピーク対応能力が不足し、給電指令とピーク調整コスト補償メカニズムが不健全で、再生可能エネルギーの大規模な系統連携要求に対応できず、一部の地区で風力放棄、水力放棄、太陽光発電放棄問題が深刻化している。風力発電と太陽光発電が技術進歩に依拠してコストを下げ、分散型発展を加速するメカニズムはまだできておらず、再生可能エネルギー発展方式の多様化が制約されている。

3.天然ガス消費市場の開拓が急務

天然ガス消費水準が著しく低いという問題と供給能力の一時的過剰問題が併存しており、速やかに新たな消費市場の開拓が必要である。インフラが不備で管網密度が低く、ピーク負荷調整用貯蔵施設が著しく不足し、送配コストが高過ぎ天然ガスの消費拡大は多くの障害に直面している。市場メカニズムが不健全で、国際市場の低価格天然ガスを適時に輸入することができず、天然ガス価格水準は総じて高過ぎ、石炭、石油価格の下落に伴い、ガス価格の競争力はさらに弱まり、天然ガス消費市場の拡大の制約となっている。

4.クリーンエネルギーへの切り替えが困難

石炭の末端エネルギー消費に占める比率は20%以上に上り、世界平均水準より10ポイント高い。「ガスによる石炭代替」や「電気による石炭代替」などのクリーン代替はコストが高い。大量の石炭が小型ボイラー、小型キルンおよび家庭生活などの領域で燃料として使用され、高品質でクリーンな石油製品の利用率は低く、交通用燃料油などの改善向上が急務である。

以上のほかエネルギーシステム全体の効率が低い、省・自治区横断エネルギー資源配置の矛盾の顕在化、エネルギー転換変革に適応する制度的メカニズムの改善の必要性などの課題がある。

第13次5ヵ年計画期の政策の方向と主要な目標

以上に紹介したような課題を解決するため、次のような政策を取ることを打ち出している。

1. 発展の質重視、ストック調整、増量最適化および過剰生産能力の積極的解消

過剰生産能力と潜在的過剰生産能力が存在する従来型エネルギー産業に対し、第13次5ヵ年計画前期は原則として追加プロジェクトは実施せず、アップグレード改造と老朽生産設備の廃棄を強力に推進する。

2. 構造調整をより重視、二重交代を加速、エネルギーのグリーン低炭素発展を推進

エネルギー需給緩和の有利なチャンスを利用し、エネルギー構造二重交代の歩みを早める。石炭消費比率低下に力を入れ、民用石炭総合対策を加速する。天然ガス価格改革を加速し、利用コストを下げ、天然ガス消費を拡大する。水力発電、原子力発電の発展を早期に計画し、着工規模を適度に拡大し、風力、太陽エネルギーなど再生可能エネルギー発展を着実に推進し、2030年非化石エネルギー発展目標実現の基礎固めをする。

3.スマートエネルギーシステムの積極的構築

システムのピーク対応能力を電力発展の短所を補う重要措置とし、良質なピーク調整電源の建設を加速する。電力系統のピーク対応能力と再生可能エネルギー受け入れ能力を大きく高める。

4.主要な目標

2020年エネルギー発展の主要な目標を表2のとおり定めた。とくに注目すべき目標としては、①エネルギー消費総量を50億t(標準炭換算)以内に抑え、石炭消費総量を41億t以内に抑えること②非化石エネルギー消費比率を15%以上に高め、天然ガス消費比率を10%にするよう努力し、石炭消費比率を58%以下に下げ、発電用石炭の石炭消費中の比率を55%以上に高めること③単位GDP当たりエネルギー消費およびCO2排出を2015年比でそれぞれ15%、18%下げること、などだ。

この目標を2014年6月に国務院が通知した「エネルギー発展戦略行動計画(2014~2020年)」と比較すると、①石炭については、消費総量を約42億tから41億t以内に抑制と強化、また消費比率についても15年の実績に鑑み、62%以内から58%以下に低下と強化している一方、②天然ガスについては、消費比率を10%以上から10%まで上げるように努力するとトーンダウンしている。

表2 第13次5ヵ年計画期エネルギー発展の主な指標
指標 単位 2015年 2020年 年平均成長率 属性
一次エネルギー生産量 億トン 36.2 40 2.0% 予測性
エネルギー消費総量 億トン 43 <50 <3% 予測性
石炭消費総量 億トン原炭 39.6 41 0.7% 予測性
非化石エネルギー消費比率 12 15 [3] 拘束性
天然ガス消費比率 5.9 10 [4.1] 予測性
石炭消費比率 64 58 [-6] 拘束性
発電用石炭消費比率 49 55 [6] 予測性
単位GDP当たりエネルギー消費低下 [15] 拘束性
単位GDP当たりCO2排出低下 [18] 拘束性

属性の欄で。予測性は努力目標、拘束性は義務的目標の意味
*は標準炭換算量

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