フロント/話題と人日本初 新築の個人住宅のプロジェクト認証 FSC国産材の「物語のある家」

2017年12月15日グローバルネット2017年12月号

川廷 昌弘さん(一般社団法人CEPAジャパン代表)

川廷 昌弘(かわてい まさひろ)さん

つやつやと光る木肌のスギの外観がひときわ目を引くご自宅でにこやかに出迎えてくださった川廷さん。建物の外壁、天井、床など目に見えるところは宮城県・南三陸町のスギ、柱には三重県の尾鷲ヒノキ、台所や洗面所など水回りには山梨県のカラマツ、デッキには神奈川県産のスギ、フロには埼玉県西川のサワラ、玄関扉や窓枠は秋田スギなど、すべて国産材を使っている。そのうち、南三陸のスギと山梨のカラマツは、森林管理や伐採施業が、環境、社会、経済の三つの側面において持続可能なものであることを第三者の確認を受けた山から伐採されたもので、今回、日本で初めて戸建て新築住宅でFSC 部分プロジェクト認証の対象となっている。

川廷さんはFSC ジャパンのアドバイザーとして活動する中で、とくに建築材として使われることの多い木材を生産する国内林業家に認証の効果が届いていないという課題を感じてきた。国内36 ヵ所のFSC認証林から切り出される木材のうち最終的に認証製品として販売されているのはたった2.4%しかないという。建築材の最終ユーザーである施主や工務店にFSC の意義が伝わっておらず、わざわざコストをかけて最終製品の認証を取得しようという動きにつながっていないためだ。「林業家の努力と汗が形になっていないという現状をなんとかしたい」という思いから、FSC 認証材を使い、材料一つひとつにそれぞれの「物語のある家づくり」が始まった。

FSC 認証材をはじめとする国産材の調達は、川廷さんがこれまでの仕事や活動でのつながりを活用しつつアレンジし、川廷さんの試みに賛同した地元の工務店ホームスイートホームメイトが施工を引き受け、新しい木材調達ルートに挑戦する形で実現した。また、人任せにしない家づくり「セミセルフビルド」方式を取り入れて、北海道産ホタテ漆しっくい喰の壁塗りには、川廷さんの呼び掛けに友人ら50 人が応えて自主的に集まったというのも特徴の一つだ。

「人が気軽に集まれる家にしたい」と抱負を語る川廷さんのすがすがしい笑顔には、各地の林業家や製材所など家づくりに関わったたくさんの人の笑顔が重なるようだった。

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