環境の本・熱帯雨林コネクション―マレーシア木材マフィアを追って
・東アジア連携の道をひらく―脱炭素社会・エネルギー・食料
2017年12月15日グローバルネット2017年12月号
熱帯雨林コネクション―マレーシア木材マフィアを追って
著●ルーカス・シュトラウマン
「世界一美しい」とたたえられたマレーシア・サラワク州の熱帯林は、タイブ・マームド州首相政権下の30 数年間に見る影もなく伐採された。
森を「ただ一つの世界」として生きてきた先住民族から奪い、死に至らしめたのは、伐採権の発行に始まる汚職の連鎖で、その背後には海外の複数の銀行口座を駆使したマネーロンダリングがある。熱帯木材がもたらす莫大な利益は、欧米各地で不動産に投資され、独裁政権の財政を支え、肥え太った伐採企業は今や、世界各地の貴重な森林で「汚職と環境破壊と人権侵害の上のビジネスモデル」を築いている。私たちは日本がサラワク産木材の大消費国であり、このモデル構築に貢献してきた事実を直視しなくてはならない。すべての木材・建設、金融関係、ESG やSDGs を語る人々の必読書。(緑風出版、2,800 円+税)
東アジア連携の道をひらく―脱炭素社会・エネルギー・食料
共編●進藤榮一・朽木昭文・松下和夫
国際アジア共同体学会に所属する研究者、ジャーナリストが、いま注目されるユーラシア新世紀の可能性について多面的な研究成果を発表している。グローバリズムや欧州統合に倣うのではなく、東アジア経済連携、低炭素共同体、エネルギー共通安全保障、食料・農産物の共同市場への道、といったテーマで東アジアならではの地域統合のあるべき姿が熱く語られている。
前滋賀県知事の嘉田由紀子さんら15 人の識者の短いコラムも掲載されており、トランプ政権の誕生、中国の台頭により、目まぐるしい変化を続ける東アジア情勢、新たな課題を知るにはタイムリーな一冊になっている。(花伝社、1,800 円+ 税)