特集/海洋ごみからプラごみ問題を考える~日本のリサイクル事情と脱プラスチックの動き欧州のプラスチック戦略と今後の日本の動き

2018年10月16日グローバルネット2018年10月号

有限責任監査法人トーマツ
奥田 拓人(おくだたくと)

欧州を中心にプラスチック規制が始まっている背景として、近年の海洋ごみ問題が根底にあるとされる。海洋ごみのうち、80~85%はプラスチックで、世界レベルで少なくとも毎年800万tのプラスチックが海洋に流出し、2050年には魚の量よりプラスチックの量が多くなると推計されるなど、生態系や地球環境への影響が懸念されている。

海洋ごみ問題と資源効率向上

プラスチックの主な排出源はわれわれの生活活動であるため、プラスチック製品が海洋に漏出しない適切な廃棄物管理や、そもそもの化石燃料由来のプラスチック使用量を削減することが求められ、環境への影響を最小限にしながら、限られた資源を有効利用する、資源効率の向上が求められている。

近年、海洋ごみ対策として資源効率向上が議論されており、2016年5月のG7伊勢志摩サミットでは、資源効率性および3Rに関する取り組みが、陸域を発生源とする海洋ごみ、とくにプラスチックの発生抑制および削減に寄与することが認識され、2018年6月に開催されたG7カナダ・シャルルボアサミットでは、2030年までにプラスチック包装の最低55%をリサイクルまたは再使用し、2040年までに100%回収するなどの達成期限付きの目標が盛り込まれた「海洋プラスチック憲章」が承認された。

プラスチックにおける資源効率の向上には、イノベーティブで持続可能なプラスチック産業を構築し、プラスチックを使用した製品の設計や製造において、リユース、リペア(修理)およびリサイクルを尊重することが必要であり、設計者、製造者、小売業者およびリサイクラーなどすべての関係者が、この問題に取り組むことを求められる。

欧州のプラスチック戦略とは

2018年1月16日、欧州委員会は近年の海洋ごみ問題に対処すべく、プラスチック戦略を発表した。この戦略では、①新たな投資・雇用機会の創出②2030年までに欧州市場におけるすべてのプラスチック容器包装をリサイクル可能なものとし③使い捨てプラスチック製品を削減し④海洋汚染対策としてのマイクロプラスチックの使用規制を検討することがポイントとされている。

また、包装プラスチックを2025年までに少なくとも55%リサイクルすること、2025年までに1,000万tのリサイクルプラスチックを市場投入する目標を掲げている。

さらに、2030年までに欧州域内における使い捨てプラスチック包装を無くし、すべてをリユース、またはリサイクル可能なものとすることを目標として打ち出している。

また、欧州の海岸やビーチに打ち上げられた海洋漂着ごみの半分は使い捨てプラスチック製品であり、その86%が10品目の使い捨てプラスチック製品で占められている。この問題に対応するため、欧州委員会は、2018年5月28日、大量に蓄積した有害なプラスチック海洋ごみの削減に向けて、欧州全域にわたる販売禁止や消費量の抑制を促すための製品要件やデザイン、ラベルの義務付けなどの新しい規制を提案している(表1)。

そのような動きに連動して、グローバル企業は次々と脱化石燃料由来プラスチックの取り組みを打ち出している(表2)。

日本の動きと今後の方向性

プラスチックに関する国際的な動向を受け、環境省では、使用された資源を徹底的に回収し、何度も循環利用することを目的として、プラスチックの資源循環を総合的に推進するため、「プラスチック資源循環戦略」を策定することとしている。また、2019年に大阪で開催予定のG20サミットに向けて、海洋プラスチック問題の解決のため、世界のプラスチック対策をリードしていくことを目指している。

近年、ESG投資などを通じて企業の非財務情報が投資家に評価される状況の中、企業のプラスチック問題への取り組みが企業評価につながっていく可能性がある。今後日本の企業においては、海洋ごみ問題に対応するため、化石燃料由来プラスチックから脱却し、リサイクルプラスチックの使用拡大やバイオ素材由来プラスチックへの転換、プラスチックの使用削減への取り組みを企業戦略に盛り込むことが求められる可能性がある。

そのような企業の脱プラスチックの動きを後押しするためには、企業の自主的な取り組みに委ねるのではなく、消費者が化石燃料由来のプラスチックを使用しないマインド(例えば、リサイクルプラスチックやバイオプラスチックを進んで使用する)を持ち、市場ニーズを創出することがプラスチックに関する資源効率を向上させ、日本における海洋ごみ対策につながっていくと考えられる。

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