NSCニュース <No. 116 2018年11月>気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)最終報告書に関するシンポジウム 報告

2018年11月16日グローバルネット2018年11月号

NSC 代表幹事、サステナビリティ日本フォーラム代表理事
後藤 敏彦

サステナビリティ日本フォーラム(Sus-FJ)が主催し、NSCと日本政策投資銀行が共催者となり、金融庁、環境省、経済産業省、日本公認会計士協会の後援でシンポジウムが開催された(プログラムは下記囲みを参照)。

●プログラム(敬称略)
司  会:フリーアナウンサー、Sus-FJ運営委員 櫻田彩子

開会挨拶:(株)日本政策投資銀行 設備投資研究所 所長  大石英生

来賓挨拶:環境省 大臣官房 環境経済課長  西村治彦

【第一部】基調講演
 ・金融庁 総合政策局国際室 室長
    池田賢志
 ・気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)メンバー 三菱商事(株) サステナビリティ推進部 部長
    藤村武宏
 ・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 市場運用部 次長 スチュワードシップ推進課長
    小森博司

【第二部】パネルディスカッション「TCFDの勧告にどのように対応するか」
パネリスト:
 ・(株)日本政策投資銀行 執行役員 産業調査本部 副本部長
    竹ケ原啓介
 ・(株)日立製作所 理事 サステナビリティ推進本部 本部長
    荒木由季子
 ・ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(株) 運用本部 スチュワードシップ責任推進部長
    小野塚惠美
 ・東京大学 公共政策大学院 客員教授
    角和昌浩
 ・三菱商事(株)
      藤村武宏(基調講演者)
モデレーター:
 Sus-FJ代表理事 後藤敏彦

第一部 基調講演

金融庁の池田室長は時間軸の重要性、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードでの開示と対話の重要性について述べた。過去情報である財務情報、現在情報としての記述情報、将来のリスク情報などが必要で、そのため時間軸の要素を入れ、経営戦略・ビジネスモデル、経営成績の分析(MD&A)、リスク情報を記述情報とし、財務情報を補完するものとして重要と解説した。

TCFDメンバーである三菱商事の藤村部長は提言の説明の後、2018 Status Reportのデータを用いて現状を解説。冒頭に今回の後援3省庁の取り組みが国際的にも高く評価されていると披露し、GPIFの発信なども相まって9月末現在、金融・事業会社計26社が支持表明を出しており、全世界513社の中でも遜色ないと述べた。開示の状況についても解説し、結論から言うとまだこれからであり、日本企業も十分世界をリードできると励ました。

GPIFの小森次長は、キーワードは持続可能性と包摂性であり、アングロサクソン型資本主義、三方よしの日本型経営のどちらでもない、幅広いステークホルダーとの協働である六方よしがあるべき姿であると述べた。さまざまな課題、イニシアチブの解説のほか、日本企業の多くが5年程度の長期ビジョンしか持っていない不十分さについて力説した。

アンケート結果は極めて高評価であった。

第二部 パネルディスカッション

各パネリストがそれぞれの立場から、TCFDとの関わりについて述べた。結論的には重要な取り組みであり、自社の健康診断としても、とにかく着手する必要性があるとのことであった。

筆者の個人的見解として整理すると、まず、事業会社はTCFDにどう対応するかを稟議するチームをトップの指示で設置すべきである。メンバーは本社横断的に選任。稟議すべきは自社としてのTCFD対応の方針、ロードマップ等であり、情報開示戦略はその後で考えれば良い。

シナリオ分析のシナリオプランニングについては莫大な経営資源を投入する必要はなく、出来合いのもの、業界で策定等々、さまざまに方策を検討すべきである。それにしても、下記囲みのような課題があることを念頭に置く必要がある。

〈共通〉
・ 中長期の情報開示の方法論の確立 ⇒(真の)統合報告
・ 過大なロード(負担)につながらないこと
〈金融〉
・ ESGリテラシーの向上
・ ESG評価方法の確立 ⇒ (真の)統合思考
〈事業者〉
・ 中長期ビジョン、ゴールの確立 ⇒(真の)統合思考
・ 財務とESGの統合 ⇒ (真の)統合思考

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