特集/水Do!フォーラム2019 脱プラスチック、そしてその先へ持続可能な消費と生産~地球をシェアするためのルール~

2019年06月14日グローバルネット2019年6月号

東京都市大学名誉教授、一般社団法人エシカル推進協議会会長
中原 秀樹(なかはら ひでき)さん

 海ごみ問題の深刻化などの影響から、「脱使い捨てプラスチック」への関心がますます高まっています。素材の転換やさらなるリサイクルの推進などの対策はもちろんのことですが、そもそも使い捨て容器・製品の使用を回避するという基本的で最も重要な取り組みを推進する動きというのは、依然限定されています。  本特集では、「脱使い捨て社会」への道筋について議論することを目的に、3 月13 日に東京都内で開催された水Do!フォーラム2019「脱プラスチック、そしてその先へ」での講演と、パネルディスカッションで報告された事例の内容を紹介します。

 

「持続可能な消費と生産(SCP)」というコンセプトは、1988年に当時のノルウェー首相、ブルントラント氏が「持続可能な開発」という概念を打ち出し、その後、1992年のリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で「これ以上、持続不可能な消費と生産のパターンを続けていてはいけない」と消費と生産の概念について見直すよう提言されたのをきっかけに生まれました。

私たちは、お金が増えれば生活の質も豊かになる、と教わってきましたが、どうも違うような気がします。豊かにはなったけれど、生活の質や幸福感は下がり続けているのではないでしょうか。そこで、従来の考え方を完全に切り離す必要が出てきたのです。

資源調達から廃棄物管理までを分析するSCPのアプローチ

国連環境計画(UNEP)には、SCPのためのグループがあります。SCPとは、「基本的なニーズを満たし、生活の質を向上させながら、地球を破壊に導くような天然資源や有毒物質の使用、そして将来の世代のニーズを抑えることなしに、サービスや製品のライフサイクル全体にわたる廃棄物や汚染物質の排出を最小限に抑えるサービスや関連製品を使用・製造すること」と定義されています。

すべての製品が、有害物質を発生せず、省エネルギーで省資源の方法で作られているとはいえません。そこで、資源の調達に始まり、それをどう使ってどのような物を作るか、そしてできた製品はどのように運んで使用し、廃棄・処分はどうするのか、ということを示す「ライフサイクル・アプローチ」が考えられました。

そして、SCPをさらに厳しく段階的なアプローチで完全クローズド型にしようというのがです。すなわち持続可能な資源開発から廃棄物の管理に至るまでの考え方をきちんと整理し、物づくりの生産現場で生かされているのか、考えなければいけないのです。

図 持続可能な消費と生産(SCP)のライフサイクル・アプローチ

雑然とした状態で拡大する世界の環境ラベル

世界中で新しい環境ラベルがどんどん生まれています。日本には、公益財団法人日本環境協会が実施するエコマークがあり、これは国際標準化機構の規格ISO14020(環境ラベルおよび宣言・一般原則)およびISO14024(環境ラベルおよび宣言・タイプⅠ環境ラベル表示・原則および手続き)に則って運営される、国内唯一のタイプⅠ環境ラベルです。

現在、世界199ヵ国に463の環境ラベルが存在しています(Ecolabel Index)。その数は拡大していますが、雑然とした状態であり、本当に信用できるものかは疑問です。

現在、国内外を問わず多くのビジネスにおいて製品やサービスへの信頼性の要求が高まっており、品質や分析・測定などの結果を示す試験成績書・校正証明書の発行を求める企業が増えてきています。そこで、試験・校正結果の信頼性を判断するための国際的な基準であるISO/IEC17025(試験所・校正機関の認定)があらゆる分野で求められています。国際的な取引はもちろん、国内での取引にもその需要は高まってきており、試験所・校正機関の品質・能力の証明には欠かせない国際規格となっています。

持続可能な社会の実現のために環境への配慮について厳しく監視を

持続可能な消費と生産を考えるときに何が大事なのでしょう。環境に配慮し、「責任ある企業」として振る舞っているように見せかけて、実は問題をうやむやにしている「グリーン・ウォッシュ」ではないか、厳しく見張っていなければなりません。

消費者の誰もがWatch Dog((暴走を見張る)番犬)となり、持続可能な社会を作るためのGuide Dog((正しい方向に導く)盲導犬)になれるか、ということが問われています。

タグ: