環境条約シリーズ 331ワシントン条約第18回締約国会議

2019年10月15日グローバルネット2019年10月号

前・上智大学教授 磯崎 博司(いそざき ひろじ)

2019年8月17~28日、スイス・ジュネーブにおいてワシントン条約の第18回締約国会議が開かれた。条約の実施確保に向けて、生物多様性・生態系サービス政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)報告書、SDGs(持続可能な開発目標、本誌2015年9月)、地元共同体の生計維持と参加、野生生物の需要削減、国内法整備、遵守確保手続、オンライン違法取引などに関する議論が行われ、関連する決議や決定が採択された。

また、多数の附属書改正案が審議されたが、以下のように、日本に直結するものもあった。コツメカワウソおよびビロードカワウソが附属書のⅡからⅠへ移さ

れた。これらは日本でもペット人気が高いが、東南アジアの生息国において違法な捕獲・取引のため激減しており、日本向けの密輸個体の没収も増えていた。

トカゲモドキ属(中国とベトナムの個体群、13種)が附属書Ⅱに掲載された。しかし、規制対象外の日本の個体群の需要が急増したり、中国やベトナムの個体

群が日本の個体群として偽装されたりする懸念が指摘された。それに応えて日本政府は、国内のトカゲモドキ属を附属書Ⅲ(本誌2006年6月)に掲載する予定である旨を議場で表明した。

アフリカ象の象牙については、一方で、限定的な取引許可が提案されたが、それは否決された。他方で、合法な国内市場が密猟や違法取引につながるとして、それらをすべて閉鎖するよう求める決定案が提出された。それに対して、合法市場と密猟とのつながりは実証されていないこと、同決定案は条約の範囲外であること、他種の合法市場に対する制約に道を開いてしまいかねないことなどが指摘された。そのため、修正案が検討され、最終的に、国内市場を有している締約国に対して、密猟や違法取引に関わっていないことを確保するためにどのような措置を取っているかを報告するよう求める決定が採択された。

アフリカのチークやスギ、南米のスギなどの樹木、また、サメ類も附属書Ⅱに追加された。ウナギ、ナマコ、サンゴなど海洋生物の管理措置も強化された。

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