フロント/話題と人関根 健次さん(ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役)

2020年02月17日グローバルネット2020年2月号

「映画を通じて、未来は変えられるという希望を届けたい」

関根 健次(せきね けんじ)さん
ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役

社会問題には無関心だったが、偶然の出会いがあり、1999年に大学の卒業旅行で中東地域を訪れて、パレスチナのガザ地区に入った。紛争地と身構えたがそこには普通の暮らしがあった。しかし一緒にサッカーをした13歳の少年に何気なく聞いた将来の夢は、「できるだけたくさんのユダヤ人を殺したい」。

帰国して、日本で就職した後も、憎しみの連鎖の中で生きている子供たちのことが忘れられず、「あの少年のような夢を子供が持たなくてもいい世界を作りたい」と2002年に起業。NGOへの寄付サイトを立ち上げるなどしたが、自身の活動のきっかけとなったパレスチナの状況は悪化の一途で、数百の学校が破壊され、病院を含むすべてのインフラが爆撃対象になり続けていた。そこで寄付だけでない、経済や国の在り方、人びとの生き方を変える方法を考え続け、たどり着いたのが映画だった。

映画館への配給以外に、市民上映会の開催を支援している。映画を観た後に意見を共有し他人の視点を知り、考えを深める機会を作ることで、問題解決への糸口が見つけられるかもしれないと期待する。2019年には全国で1,800回の上映会を開催し、3万5千人が参加、新しい出会いや行動につながっている。

3月末から上映予定の「グリーン・ライ エコの嘘」では、私たちが何気なく買っている商品の先に、森林破壊の現実があることを知ったオーストリアの映画監督がインドネシアのパーム油生産などの現場を訪ね、問題の解決方法を探っていく。関根さんは1月に自らボルネオの熱帯林地域を訪問。想像を超える規模の森林減少に驚いたが、一方で、野生生物との共存を目指すアブラヤシ農園や、分断された森をつなぐ回廊に取り組むNGOの努力に可能性を感じたという。

「映画で感動や怒り、悲しみを伝え、人びとの考え方に訴えることで社会課題に取り組む人が増えれば、世界は変わるかもしれない。国や宗教を超えて、多様な解決方法を伝える作品を届けていきたい」。人類が直面する課題は深刻さを増しているが、どんな時代にも未来を切り開いてきた人はいた。映画を通じて、未来は変えられるという希望を届けたい。(ぬ)

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