フロント/話題と人山本 祐也さん
(エシカル・スピリッツ株式会社共同発起人、株式会社未来酒店代表取締役CEO)

2020年04月15日グローバルネット2020年4月号

廃棄酒かすからジンを造り、耕作放棄地での米作りを目指す

山本 祐也(やまもと ゆうや)さん
エシカル・スピリッツ 株式会社 共同発起人、
株式会社 未来酒店 代表取締役CEO

日本酒の製造過程で生まれた酒かすからジンを造り、その販売利益の一部で酒米を購入して酒かすの提供元に返す、というプロジェクトが立ち上がった。

仕掛人の山本さんは、若い造り手による珍しい日本酒を集めたセレクトショップや、AI(人工知能)が好みの日本酒を診断してくれるサービスなど、日本酒にこだわったユニークな事業を数多く手掛けてきた。

「日本酒を未来の基幹産業にする」と言う山本さんは石川県出身。高校の同級生が酒蔵の息子だったことから、日本酒とその市場にずっと興味があったという。大学卒業後、証券会社の投資銀行部門で企業の資金調達等について学び、大手アイドル運営会社に転職して事業開発に携わったのもその後に考えていた日本酒の商品企画を見据えてのことだったという。

2013年に「未来酒店」を起業。酒米の生産者や酒蔵と連携し、米の生産から日本酒の醸造、販売までの一貫システムを築いてきた。地方の酒蔵を回る中で、日本酒の製造過程で生まれる副産物の酒かすはかす漬けなどの食品や、養豚の飼料などに利用されているものの、使用する米の30?35%(重量比)にも上るその量はとても使い切れないという悩みの声を多く聞いた。そこで2020年2月、業界の異なる仲間4人と会社を立ち上げ、「エシカル・ジン・プロジェクト」をスタート。酒かすを蒸留し、独自のレシピで香りをつけたジン「LAST」の商品化を実現した。プロジェクトでは酒米を生産委託し、酒かすを提供してくれる酒蔵に届けることで、国内農業で問題となっている耕作放棄地の解消も目指す。「食品廃棄物の再利用」「農耕地の再生」によって生まれる循環経済の実現がプロジェクト名の由来であり究極の目標でもある。

LASTはプロジェクトの第1弾商品。2020年秋にはエシカルな生産に特化した蒸留所を設立し、酒かすを利用した他の蒸留酒の開発にも着手する予定だ。

長い歴史の中で日本人の暮らしを支えてきた伝統産業である日本酒業界で革新を追い続ける山本さん。環境に配慮し社会に貢献する「エシカル」という新たなテーマで、さらにどんなことを仕掛けて酒蔵を、農家を、そして消費者を動かすのか楽しみだ。35歳。(絵)

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