環境条約シリーズ 340「マンハッタン原則」の12の行動原則

2020年07月15日グローバルネット2020年7月号

前・上智大学教授

磯崎 博司

 

<環境条約>「マンハッタン原則」の12の行動原則

2004年9月29日にニューヨーク・ロックフェラー大学においてWCS(野生生物保全協会)主催の国際シンポジウム「ワンワールド・ワンヘルス – グローバル化した世界の健康に学際的な橋を架ける」が開かれ、人・家畜・野生動物の間を伝播する感染症の現状と対策が検討された(本誌2012年1月、20年6月)。その成果である「マンハッタン原則」は、12の行動原則を提示した(以下は、その概略である)。

  1. 人・家畜・動物の健康は一体であり、感染症は食料・経済・生物多様性にも脅威であると認識する。
  2. 土地・水の利用の決定は健康に実際に影響を及ぼすと認識する。その認識不足は生態系の許容力の低減と感染症の出現・拡散をもたらす。
  3. 動物の健康科学を人の疾病対策に組み入れる。
  4. 公衆衛生は環境保護に有効であると認識する。
  5. 新興・再興感染症の予防・制御対策は、適応型・総合的・前向きに企画する。
  6. 感染症対策の策定時に、生物多様性の保全と人のニーズ(家畜の健康を含む)との完全統合を検討する。
  7. 感染症の出現・拡散のリスク低減のため、生きている野生動物・その肉類の国際取引需要を削減し管理する。
  8. 感染症制御のための自然状態の野生生物種の大量捕殺は国際的・学際的・科学的な合意のあるときに限る。
  9. 新興・再興感染症による人・家畜・動物に対する脅威の深刻さに応じて、世界の人・動物の健康のための投資を増やす。
  10. 世界の健康と生物多機性の保全のため多様な主体による国際協力関係を構築する。
  11. 感染症早期警戒態勢の確立に向けて世界野生動物健康監視ネットワークへの十分な資材と支援を提供する。
  12. 健全な地球環境に向けて健康と生態系の一体性に関する理解を促進するため、世界の人びとへの教育・啓発および政策過程への働き掛けに対して投資する。

2000年代後半にWCSにより後続の地域会合が続けられた。その後、このテーマは、獣医師会・医師会(マドリード2015年、福岡2016年)その他の主催による世界各地での会合、また、関連する国際・国内機関や自然保全諸条約の活動に引き継がれている。

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