NSCニュース No. 127(2020年9月)NSC定例勉強会 報告「サステナブル経営・環境情報開示の在り方~環境報告書・取組の優良事例を聞く~」

2020年09月15日グローバルネット2020年9月号

NSC代表幹事、横浜国立大学教授
八木 裕之(やぎ ひろゆき)

 第23回環境コミュニケーション大賞受賞企業が決定した。今年度は第1回ESGファイナンス・アワードが併せて創設され、環境関連の重要な機会とリスクを経営戦略に取り込み、企業価値向上と環境へのプラス効果を生み出している企業が環境サステナブル企業として表彰された。

 ESG投資のメインストリーム化によって、環境情報開示の内容や方法は急速に変化している。NSCでは、環境コミュニケーション大賞受賞のコニカミノルタ株式会社と株式会社マルイグループ、ESGファイナンス・アワード環境サステナブル企業金賞受賞の花王株式会社の担当者、環境省の環境デュー・ディリジェンス担当者を招き、先進的な環境取組・情報開示戦略についてオンラインで勉強会を開催した。

 

コニカミノルタの取組

 コニカミノルタ株式会社サステナブル執行役員サステナビリティ統括部長高橋壮模氏から同社の環境経営について発表があった。同社では、経営ビジョンに基づいて環境経営が実施されており、バリューチェーン上の取引先や顧客、地域社会との協働によって実施する、同社独自の考え方としてカーボンマイナスを提唱する。

 環境経営は、企画・経営、調達・生産、販売・サービスの三つのグリーン活動とそれらのリンクによって実現されているが、そのノウハウや情報は環境デジタルプラットフォームを構築することで、同プラットフォーム参加企業などへの適用が図られている。

 

マルイグループの取組

 株式会社マルイグループサステナビリティ部小泉昭夫氏から同社の共創サステナビリティ経営について発表があった。同社は、環境への配慮、社会的課題の解決、ガバナンスへの取組とビジネスが一体となった共創サステナビリティ経営による企業価値の向上を目指しており、これを実現するために2050年を念頭に置いた長期ビジョン・目標を策定し公表している。

 情報開示では、さまざまな開示方法を用いて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、SBT(科学的な根拠に基づく目標)などの多様な情報が開示され、作成においては、関係部署の連携が図られると同時に、外部評価情報のフィードバックなどによってブラッシュアップが図られている。

 

花王の取組

 花王株式会社ESG活動推進部担当部長柴田学氏から同社の環境への取組と情報開示について発表があった。同社は、「Kirei Lifestyle Plan」を花王らしいESG戦略として公表し、ESG経営にかじを切ることを宣言している。そこでは、「花王ウェイ」をESG視点で実現し、事業の持続的な利益ある成長が目指されている。

 「Kirei Lifestyle Plan」は、花王のESGビジョンと、これを実現するための戦略である、花王のESGコミットメントとアクションで構成されており、2030年に向けたESG目標が設定されている。

 

環境デユー・ディリジェンス

 環境省大臣官房環境経済課課長補佐菅生直美氏から環境デュー・ディリジェンスの手引書について発表があった。同手引書を中心に、環境デュー・ディリジェンスについて、プロセスと運用、企業活動において重要になってきた背景、環境マネジメントシステムとの関係、バリューチェーンへの展開、各国の関連規制などについて詳細な説明があった。

 また、今年度から設けられたESGファイナンス・アワードについての解説と受賞企業の紹介があった。

 オンラインによる初めての勉強会だったが、サステナビリティ戦略のガバナンス、長期KPIの設定、サステナビリティマネージャーの役割、グリーンマーケティング、環境デジタルプラットフォームなどに関する質問があり、活発な議論が行われた。

 環境戦略と経営戦略の統合が進むにしたがって、環境情報はさまざまなステークホルダーを想定して、環境報告書、統合報告書、有価証券報告書などの多様な情報開示ツールを用いた戦略的な開示を行うことが求められている。

 NSCでは、今後も、サステナビリティ情報開示の在り方を、企業の皆さんと一緒に検討していきたい。

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