環境条約シリーズ 346スペースデブリ対策

2021年01月15日グローバルネット2021年1月号

前・上智大学教授
磯崎 博司

 

 宇宙活動に参入する国や企業が増えて人工衛星も増えるとともに、スペースデブリが大きな問題となっている。スペースデブリ(以下、デブリ)とは、人工衛星軌道周辺にある不要な人工物体(使用済み人工衛星やロケット上段、放出された部品、その他の破片など)であり、その数は、10㎝以上:約2万、1㎝以上:50~70万、1㎜以上:1億超に及ぶとされる。

 微小でも機器を損傷し得るため、デブリの急増は宇宙活動へのリスクを高めている。実際、ロシアの使用済み軍事衛星が米国のイリジウム通信衛星と衝突し(2009年)、また、ロケット破片との衝突(1996年フランスの衛星、2013年エクアドルの衛星)も起きた。2018年12月にはオーブコム通信衛星が破砕され、その原因として微小デブリとの衝突が指摘されている。これらの衝突によっても、新たなデブリが発生した。他方で、軍事戦略的な破壊(人工衛星破壊実験)も、冷戦時代に米国とソ連、2007年に中国、2019年にインドが行い、大量のデブリを発生させた。

 さて、宇宙条約(9条)は、宇宙空間での「有害な汚染」や他国の活動に対する「潜在的に有害な干渉」の防止を定めているが、デブリについては明記していない。なお、国連スペースデブリ低減指針(2007年)は、この問題に直接対応する文書であり、具体的措置を提示している。また、日本の宇宙活動法(2016年)は同指針に沿っており、デブリの低減を義務付けている(法22条、施行規則22~24条)。

 ところで、宇宙活動法以前の2009年に打ち上げられた日本のGOSAT(温室効果ガス観測技術衛星)には、同法は適用されないが、環境省は、事業主体としての責任と率先行動を表明し、そのデブリ化の防止に関する中間まとめを2020年10月に公表した。それは、後継機の運用確認時点で利用可能であってもGOSATの運用を終了し、デブリ低減策を取ることを提言している。その際は、上記の国連指針(とくに、運用終了後に取るべき措置に関する指針5~7)および宇宙活動法施行規則の関連措置を準用することが望ましい。

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