フロント/話題と人たいら 由以子さん(ローカルフードサイクリング株式会社 代表取締役)

2021年03月15日グローバルネット2021年3月号

台所から始まる食の循環を目指して
~生ごみを堆肥に変えるLFCコンポスト

たいら 由以子(ゆいこ)さん
ローカルフードサイクリング株式会社
代表取締役

一見おしゃれなバッグ。中身は1日約300g×約2ヵ月分の生ごみが入るコンポスト(堆肥)。広い庭や大きな容器がなくても気軽に取り組めるこの「LFCコンポスト」を始める人が今、じわりじわりと増えている。

このバッグを開発・販売するたいらさんは25年ほど前、余命宣告を受けた父親を玄米菜食で看病することになった。しかし、当時自宅のある福岡市内では安全な水と無農薬野菜は容易に手に入らず、その現状に衝撃を受けた。将来の食の安全に対し不安を感じたたいらさんは、「水を浄化する土と暮らしを改善すれば社会問題は解決できる」という結論にたどり着き、1999年にNPO団体を立ち上げ、本格的に生ごみを土の栄養となる堆肥に変えるコンポストの普及研究活動を始めた。

コミュニティガーデンの運営や菜園づくりの講座などにも力を入れる一方、「お金や知恵のほか、ごみ全体の半分近くを占める生ごみという大きな資源のある都市部のごみ削減が重要」と考え、都市部でも取り組めるコンポストの開発に着手。昨年1月に会社を設立し、LFCコンポストの販売に乗り出した。

バッグの中に数種類もの素材を配合した基材を入れ、毎日台所から出る生ごみを混ぜ合わせれば、それが微生物の働きで分解され堆肥となる。バッグは虫の侵入を防ぐファスナー付き、基材は長年の経験に基づいた臭いの出にくい独自の配合で定期購入も可能だ。販売から1年間で1万2千人余りが購入。継続率は約8割に上る。利用者は東京や大阪など都市部の人が多く、「ごみ出しの回数が大きく減った」「微生物や自然の力、資源の循環が実感できる」と喜びの声が届く。

今年2月から「せっかく堆肥を作っても時間や場所がなく使いようがない」という人を対象に、東京都内で月1回堆肥を持参してもらう回収イベントや、できた堆肥を送ってもらい、運営する農園でその堆肥を使って育てた野菜で返すというキャンペーン(堆肥の送料も野菜の代金も参加者負担)を実施したところ、毎回すぐ定員に達するほどの反響があるという。

「ローカルな取り組みから大きな循環社会をつくりたい」というたいらさん。台所の生ごみから、安全で豊かな暮らしを実現する食の循環を目指す。(絵)

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