環境条約シリーズ 353奄美大島・徳之島・沖縄島北部・西表島が世界自然遺産として登録

2021年08月15日グローバルネット2021年8月号

前・上智大学教授 磯崎 博司(いそざき ひろじ)

2021年7月16~31日に開かれた世界遺産委員会の第44回拡大会合(オンライン)において、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(以下、奄美・沖縄)の世界自然遺産としての登録が決定された。それに先だって同年5月に、世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)は、固有の希少種(それらはユーラシア大陸では絶滅した生物でもある)の存続を支えてきた奄美・沖縄の独自の森林生態系の価値を評価して、登録簿への記載を勧告した。

実は、奄美・沖縄は、17年2月に登録提案されていた。そのときは、IUCNが見直すべき項目を指摘して登録延期を勧告したのを受けて、提案は取り下げられた。

その後、米軍北部訓練場の返還地をやんばる国立公園・森林生態系保護地域に指定して対象区域に組み入れ、分断された区域を連続させて保護区域を広げ、また、外来種対策や観光利用計画を策定するなどして、19年2月に再提案された。それは2020年の世界遺産委員会で審査される予定であったが、同委員会はコロナ禍のため延期され、2年分を扱うこととされた上記拡大会合において審査されたのである。

これまでに登録された屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島と比べて、奄美・沖縄は、評価された固有の生態系が人の生活空間の近くに存在するところに大きな特徴がある。そのため、登録に併せて、a)特に西表島を含み観光客数の削減および統合的な観光管理、b)希少種(アマミノクロウサギ、イリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナを含む)の交通事故対策、c)包括的な河川再生戦略の策定、d)緩衝地帯への森林伐採の限定とその伐採の削減が要請され、また、その対応状況を2022年12月1日までに提出してIUCNの評価を受けることとされた。

ほかにも、すでに侵入した外来種の制御は緊急課題である。また、沖縄北部での米軍返還地に残されている廃棄物の撤去とともに基地運用時の遺産価値への最大限の配慮を、日本政府は世界遺産条約の責務として米国と協議する必要がある。

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