環境の本句集 ひとり遊び

2022年04月15日グローバルネット2022年4月号

句集 ひとり遊び

著●乳井 昌史

がんを患い手術後も再発、転移、そして新たな病とも向き合いながら、10年以上山梨県の増冨鉱泉で温泉療法を続けるエッセイストの著者が、湯治の場で湧き上がる言葉を紡いだ「“湯治場俳句”とでも言うべき句集」。「難病と向き合う覚悟も迫られて」「木の実落つ音背に聞きてうろたえり」という状況でも、通い続ける中で著者が感じる湯治場周辺の自然の心地良さや環境の変化、山間地域の衰退と再生、湯治仲間との触れ合い、そして万物の生命の美しさと尊さが、わずか17音で優しく、また力強く読み手の心にも伝わってくる。

通り一遍の写生ではない、「ひとり遊び」のように生み出された365の句は、目いっぱいの想像力で、気持ちを寄り添わせて詠んでみてほしい。(土曜美術社出版販売、2,000円+税)

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