NSCニュース No. 137(2022年5月)TCFDとIFRS & ISSB

2022年05月17日グローバルネット2022年5月号

NSC共同代表幹事
サステナビリティ日本フォーラム代表理事
後藤 敏彦(ごとう としひこ)

2015年、G20の財務大臣と中央銀行総裁は金融安定理事会に対し、金融セクターで気候関連事項を考慮できるか検討するよう求めた。金融市場の機能不全回避や、資産価値の暴落リスク、金融への潜在的影響等への懸念等からである。同年末に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が立ち上げられ、2017年6月に最終報告書「提言」を公表している。これが企業の、特に金融向けの情報開示のガイドラインの統一化を促し、開示の主流となり、大きな影響を与える状況となっている。

開示ガイドライン統一化への動き

2020年9月に、TCFDに沿った開示のため、それまで水面下でうごめいていたガイドライン統一化の動きが一気に表面に現れた。

・世界経済フォーラム(WEF)がガイド統一のための意見募集のホワイトペーパー発出。
・5団体(CDP、CDSB、GRI、IIRS、SASB)が、包括的な企業報告への協働の意図を公表。
・IFRS(国際財務報告基準) 財団はサステナビリティ報告について意見公募の協議文書を発出。

以後の動きは省略するが、IFRSが2021年11月に設立したISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が、主として金融向けのサステナビリティ報告の基準を作成する動きとなっている。このISSBにはCDSB、IIRC、SASBが合体することになっている。なお、GRIはISSBと協定し、協力関係を保つとともにマルチステークホルダー向けの開示について活動するとのことである。

TCFDの提言および新文書

IFRS財団は傘下にIASBを持ち国際会計基準を取り仕切っているが、これがサステナビリティ報告基準のISSBを設立した。設立時に今年6月公表予定の新基準のプロトタイプを公表したが基本的にTCFDの提言並びに新文書に則したものである。

TCFDの提言についてはサステナビリティ日本フォーラムで付属文書も含め全文翻訳しているので参考にされたい(https://www.sustainability-fj.org/)。

2021年10月、TCFDは「指標、目標、移行計画に関するガイダンス」と提言の付属書の改訂版「気候関連財務情報開示タスクフォースの提言の実施」という文書を公表した。日本語訳は、TCFDコンソーシアムのホームページ上に公開されている。

2021年6月に東京証券取引所と金融庁はコーポレートガバナンス・コードを改定し、プライム市場上場企業にTCFDまたはそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実させることを求めている。プライム市場上場企業1,838社(4月28日現在)においてはTCFDがディファクトスタンダードになったのである。

今後の動向

G20財務大臣・中央銀行総裁会議は2021年10月に次の声明(抜粋)を公表した。

「我々は、サステナブル・ファイナンス作業部会が作成した、G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ及び統合レポートを承認する」。

ロードマップでは以下のようなことが描かれている。

・G20は、企業価値創造に関するサステナビリティ関連情報の開示のための国際的に一貫した、比較可能で信頼性の高いベースライン基準を策定するIFRS財団の作業プログラムを歓迎する。
・これらの基準は、TCFDの枠組みに基づき、幅広いステークホルダーと協議しながら他のサステナビリティ報告組織の作業を考慮したものであるべきである。
・ISSBは、国および地域の要件との相互運用性の柔軟性を許容しつつ、(中略)ベースラインとなるグローバルなサステナビリティ報告基準を策定すべきである。
・ISSBは、当初は気候関連の情報に焦点を当て、将来的には、自然、生物多様性、社会問題等のサステナビリティに関連するその他のトピックにも対象を広げるべきである。

ロードマップでは、2022年前半に気候変動関連の基準開発を終え、後半以降サステナビリティ開示全般(生物多様性、人権・人材等)の基準開発に進むとしている。

NSCでは定例研究会でISSBについての企画を検討中である。乞うご期待。

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