環境ジャーナリストからのメッセージ~日本環境ジャーナリストの会のページ未来志向の社会構築に向けて~JFEJ30周年記念シンポジウムに参加して

2022年07月15日グローバルネット2022年7月号

一般社団法人Media is Hope 共同代表、日本版気候若者会議 発起人
西田 吉蔵(にしだ よしぞう)

私たちMedia is Hopeは、気候変動を解決するために、気候変動問題に熱心に取り組む関係者をサポートし、ジャーナリズムを視聴者という立場から支援することを目的にした団体で、2020年から活動を開始し、今年6月に法人化した。6月4日に開かれた日本環境ジャーナリストの会の「30周年記念シンポジウム」に、共同代表の名取由佳が視聴者・若者視点のパネリストとして参加した。今回はシンポジウムの所感と、気候変動問題の解決に必要な社会変革について書いてみたい。

 

●気候変動解決に必要な視点

私は普段は企業に勤めながら、気候変動の本質的な解決に向けたさまざまな活動をしている。2020年からはフランス政府主導で実施されたミニパブリックス型の気候市民会議の導入を日本政府に対して提言し、同時に、未来世代の若者自ら解決策を政府や企業へ提言する「日本版気候若者会議(主催:日本若者協議会)」を立ち上げた。民主主義をアップデートする新たな社会システムの実装を目指している

  詳細はパタゴニア記事「未来志向の民主主義に大切なこと」 をご覧ください

そのような活動を行う理由は、気候危機の解決に必要な「未来志向の社会構築」のためである。子どもや彼らの子どもたちの世代が幸せに暮らせる社会や地球環境を残す「仕組みづくり」に重点を置いている。また、気候変動問題の本質と自己探求の過程で、「自己」には自分一人を指す狭義な自己と、他者や環境を含む大きな自己があることに気付いた。気候変動問題とは、資本主義や合理主義の下、自分さえ良ければいいという狭義な自己のまん延によって引き起こされた、あらゆる社会問題の象徴と私は捉えている。気候変動問題の解決には、「未来志向の社会構築」と「大きな自己」の探求が必要なのではないか。

報道の中立性も現代を生きる人びとや価値観から中立を模索する場合が多い。未来志向であれば「100年先の世代」まで含めた中立を考える必要がある。気候変動問題の解決には、単に「脱炭素すればよい」と問題を矮小化せず、未来を見据えたより良い社会変革が不可欠だ。

 

●「ジャーナリスト宣言2022」

シンポジウムで発表された宣言(全文は先月号に掲載)は、視聴者の目線からも意欲的かつ挑戦的な内容に映った。宣言文にある「自省を込めて」という言葉は重く会全体を包んでおり、これほど地球環境危機に対し過去と未来に責任感を持った環境ジャーナリストの方々がいることに勇気づけられた。30年間の挑戦と蓄積を真摯に受け止めた。

宣言の中でも「未来社会を担う若者の意見が、現在の政策および社会・経済システムに明確に反映する仕組みを構築する」との文言に強く共鳴した。自ら報道の領域を超え、主体的にジャーナリズムを拡張する動きであり、気候変動問題の解決の鍵になる「大きな自己」の獲得に希望を感じるからだ。

 

●今後の気候変動報道への期待

一つ目は残された時間に対して。IPCC報告書で「1.5℃目標の達成には、世界の温室効果ガスの排出量をピークアウトさせる必要がある」とされた2025年まであと3年。実行力の高い政策実施までに2年は必要で、世論の賛同も不可欠。逆算すると、あとたった1年で国民的議論が起こり行動変容が劇的に増える必要がある。そこで社会全体を早急に巻き込むメディアの力は大きい。これがまさに「メディアが希望」とする理由だ。さらに、私たち視聴者も意志あるメディアと一緒に変わっていく必要がある。

二つ目はメディアのアップデート。これからメディアは問題提起と客観報道だけでなく、化学反応を促進する「触媒」のような存在になってもらいたい。つまり、社会課題や気候変動に対して、メディアやジャーナリスト自身が主体的に関わり新たな社会の土壌を作る存在になること。直接的に問題を解決するプロジェクトを立ち上げ、発信することでさらなる行動変容を促す、そんなプログラムを期待する。

私たちMedia is Hopeは、メディアがより良い社会変革の触媒となれるよう視聴者や企業をつなぎ、支援していきたい。未来志向の社会構築に向けて、メディアが希望。メディアが未来をつくる。

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