環境条約シリーズ 375ラムサール条約の第14回締約国会議

2023年06月15日グローバルネット2023年6月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

2022年11月5~13日にスイス・ジュネーブと中国・武漢をオンライン接続して、「人と自然のための湿地行動」をテーマとするラムサール条約の第14回締約国会議(COP14)が開かれ、合計21の決議が採択された。なお、11月6日に武漢で開かれた閣僚級会合においては、湿地保全のための緊急行動を要請する「武漢宣言」が採択された。

残念ながら湿地の状況(本誌19年1月)は改善されていないため、これまで同様、湿地に関する認識の向上およびそれに基づく湿地行動を求めて、新しいCEPA(対話・能力構築・教育・参加・啓発)アプローチ(決議8)、学校における湿地教育の推進(決議11)、若年世代の主体的参加(決議12)、また、マングローブのための地域率先行動および国際マングローブセンターの設立(決議19)などが採択された。

それに加えて、生物多様性条約、持続可能な開発目標などとの連携強化が求められた。それは、気候変動に対応した湿地生態系の保全・利用・管理(決議17)、他の条約や制度との連携協力(決議6)、持続可能な開発国家戦略への湿地管理の統合(決議16)などに表されている。その他、予算措置、組織構成、運営改善、戦略計画の修正、各種手続や選定基準の改定に関する決議も採択された。

他方で、ウクライナにおける16ヵ所の登録湿地におけるロシアの侵略による環境損害を確認し、ロシアに対して環境破壊の防止と即時無条件全面撤退を要求し、加盟諸国に対して損害把握・悪化防止・修復への協力を要請するという決議20は、例外的に記名投票に付され、賛成50・反対7・棄権49で採択された。

恒例のラムサール賞(個別6部門と特例部門の計7部門)は、今回は4部門・4人に授与され、そのうち「湿地の賢明な利用」部門には呉地正行さん(日本雁を保護する会・会長)が選ばれた。また、湿地自治体認証には(COP13で18自治体、本誌19年1月)、12ヵ国の25 自治体が選ばれた。それには日本からは初めて、新潟市および出水市(鹿児島県)が含まれた。

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