環境条約シリーズ 376国際公域における生物多様性の保全・利用(BBNJ)

2023年07月14日グローバルネット2023年7月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

国際公域(公海・深海底)における生物多様性(BBNJ)の保全・利用に関する新協定を国連海洋法条約の下に作成するための準備会合は、2016年から17年にかけて4回開かれた(本誌17年10月)。その報告を受けて採択された国連総会決議(72/249)に基づいて、準備会合の勧告を考慮してBBNJ新協定を起草するための政府間会議(IGC)が招集された。

IGCは、手続事項に関する会合(18年4月)に続き、第1回会合(18年9月)、第2回会合(19年3~4月)、第3回会合(19年8月)、第4回会合(新型コロナウイルス感染症のため2年間延期されて22年3月)、第5回会合(22年8月)、第5回再会合(23年2~3月)および第5回再々会合(23年6月)を通じて、協定案を検討し条文交渉を行った。第5回再々会合はニューヨークの国連本部で開かれ、6月19日にはBBNJ協定が反対なしで採択された。

その主要部分は、①一般規定(定義、目的、適用範囲、原則)、②公正かつ衡平な利益配分を含む海洋遺伝資源(利益配分の対象=海洋遺伝資源およびその塩基配列情報、科学研究・技術革新の促進、遺伝資源採集活動の事前通告、利益配分の確保)、③海洋保護区を含む区域管理手法(保護区の設置基準:附属書Ⅰ、提案・審査手続、緊急措置、保護区における活動規制、開発途上国支援)、④環境影響評価(評価の対象・基準・項目、公表・意見提出・協議に関する手続、開発途上国支援)、⑤能力構築と海洋技術移転(対象活動の範囲:附属書Ⅱ、海洋技術の定義:第1条10項)、⑥組織・運用面の規定(組織構成、財政措置、実施・遵守確保、紛争解決、発効)である。なお、この協定は、60ヵ国の批准などの後、120日で発効する。

以上の②と③は、国際公域において規制されていなかった空白部分(生物多様性の保全・利用)を埋める役割を果たしている。また、④と⑤は多くの条約などが要請していることであるが、他制度との連携、運用・進捗情報の公開、支援措置の拡充など、制度的な体系化が図られている。

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