特集/シンポジウム報告 Refillサミット2024 in 広島 リフィルを広げて地球も地域もサステナブル<ディスカッション>しまなみから全国へ広げよう リフィルのまちづくり

2024年03月22日グローバルネット2024年3月号

パネリスト:ウシオチョコラトル代表
中村 真也さん
広島県環境県民局環境保全課 瀬戸内海環境戦略グループ主任
樽谷 帆奈美さん
尾道サイクリング協会
三島 誠治さん
Refillひろしまリーダー
安藤 志保さん
翻訳家・文筆家
服部 雄一郎さん
モデレーター:水Do!ネットワーク事務局長
瀬口 亮子さん

広島県内のリフィルの取り組み

瀬口:まず、チョコレートショップ「ウシオチョコラトル」の中村さん、広島県の樽谷さん、そして尾道サイクリング協会の三島さんに、広島県内でのそれぞれの活動を報告いただきます。

中村:広島県尾道市の向島という島の南の山の中腹で、チョコレートメーカーを営んでいます。カカオ豆と砂糖のみのシンプルなチョコレートを作っています。チョコレート販売から始まって、今はしょうゆの絞りかすなど、市場価値が見出されていないけれど栄養価も高い、味もおいしいものを活用して、どんどん新しいチョコレートを作っています。原料のカカオ豆は、生産地へも足を運び、自然の中で育ったものを使っています。
給水スポットに参加し、店にステッカーも貼っています。エスプレッソマシンの浄水器によるおいしい水が提供できるので、皆さんぜひ寄ってください。

樽谷:広島県は「2050 輝く GREEN SEA 瀬戸内ひろしま宣言」の下、瀬戸内海に新たに流出する海洋プラスチックごみの量を2050年までにゼロにすることを目指しています。
行政だけでは到底達成できない大きな目標ですので、宣言すると同時に、事業者や関係団体、そして行政など幅広い関係主体が手を取り合って一緒に取り組んでいこうと2021年6月に「GREEN SEA 瀬戸内ひろしま・プラットフォーム」(略称 「GSHIP」(ジーシップ))を設立しました。
現時点(2024年1月11日時点)で、素材・製品のメーカーをはじめ、リサイクルや小売・流通、化粧品、メディア、ICT関連、食品・飲料、宿泊事業者、消費者団体などさまざまな業界から、121の会社や団体が参画しています。
GSHIPでは①プラスチックの使用量削減、②プラスチックごみの流出防止、③プラスチックごみの清掃・回収、④情報の収集・発信・共有という4つのキーアクションを掲げて、取り組みを進めており、特に①に注力しています。GSHIPの取組のうち、リフィルの考え方にも通ずる①の取組をいくつかご紹介します。
飲み物をテイクアウトする時にプラスチックカップではなくステンレスカップをシェアリングできるサービス「Re&Go」、スーパーを拠点に食料品容器をガラス製や金属製に置き換えて同一容器を循環利用するショッピングプラットフォーム「Loop」、百貨店の売り場でシャンプーやボディウォッシュなどを欲しい分だけ買える「日用品の量り売り」など、多彩な実証実験が行われています。
このほか、企業が独自に展開しているものもあり、県内ではさまざまなプロジェクトが進められています。
しかし、取り組みを進めるだけでなく、知っていただくことも大事ですので、テレビや新聞などで取り上げていただけるようお披露目イベントを開催したり、GSHIP専用サイトでウェブ配信したり、情報発信にも力を入れています。市民それぞれが自分に合った取り組みを選択できるよう、情報にアクセスできる機会の創出にも注力しています。

三島:福山市出身で、40歳の春に瀬戸内しまなみ海道を初めて知ったことでサイクリングにはまり、2017年に前職の教員を辞め、2年間東京で自転車について学んでサイクリング協会に登録しました。現在の職業は「サイクリングガイド」です。お客さんに自転車に乗っていただき、地域の方と触れ合ったり、素敵な景色を見てもらったり、グルメを楽しんでもらったりしていただく「SDGsな旅を演出する添乗員」です。
サイクリングコースとしても有名な瀬戸内しまなみ海道には、自治体が運営するサイクリストの休憩所「サイクルオアシス」、地域団体が管理している「サイクルステーション」があります。さらに広島県観光連盟では「おもてなしスポット」を登録していて、434件もホームページに掲載されています。いずれも、空気入れの利用、トイレの利用ができるとともに、給水もできることになっています。
自分も以前はペットボトルの水を買ってマイボトルに移し替えていたのですが、これらのスポットが認知されればサイクリストがボトルに給水できるのではないか、給水スポットをPRしたいと思い、Refillひろしまに参加しました。

個人の取り組みを地域の取り組みに広げるには

瀬口:では、議論に移りたいと思います。個人のエコな取り組みも楽しく大切ですが、関心のない人にも行動を変えてもらうには、仲間を増やし、地域の取り組みに広げていく必要があると思います。そのためには、どのような一歩を踏み出したらいいのでしょう。

服部:一番大事なのは広めていくことです。町役場の職員だったときは広めることが仕事でしたが、関心のない人に振り向いてもらうことはとても難しいと感じました。その後、自分の得意分野で自分のやりたいことをやって発信したら、周りで気付いて自然に変わってくれる人が出てきた、それはうれしい発見でした。

安藤:マイクロプラスチックによる環境問題についての映画「プラスチックの海」が話題になっていたとき、上映会を開催し、さらにビーチクリーンなどその後のアクションの提案までしたところ、多くの人が参加してくれました。イベントを企画するときは、次のアクションも用意しておくというのは大事だと思います。
また、リフィルの活動は、ボトルを持つという行動に加えて、給水しやすい環境づくりも行っているので、個人でも街づくりにも貢献できるという、わかりやすさがポイントだと思っています。

瀬口:そうですね。Refill福井・嶺南は活動報告でも紹介いただいたように、給水スポットを生かして魅力的な街をつくろうと、行政や事業者、企業やお店の方などが参加いただいています。報告を聞いて、個人から地域の仲間を増やすのに、リフィルはうってつけの活動なのだなと改めて思いました。
給水スポットに登録してくださったお店には、「うちは登録したけど、他のお店も参加しませんか」とSNSなどで発信したり、伝えて広げてもらうこともできますね。

中村:もちろんです。伝えることは、やりたいと思っています。

ディスカッションの様子(水Do!ネットワーク提供)。登壇者は右から服部さん、安藤さん、三島さん、樽谷さん、中村さん、瀬口さん

サイクルオアシスの給水を認知してもらうには何が必要か

瀬口:ご紹介いただいたように、「サイクルオアシス」がもともと行政の取り組みとして設置されていますが、無料で給水できるというのはサイクルオアシスになっているお店でも認識されていなこともあります。多くの人にしっかり認知してもらうにはどんなことが必要でしょう。

三島:しまなみ海道に来たサイクリストならほとんどが立ち寄るサイクルアシスやおもてなしスポットですが、飲み水をボトルに入れるという概念がまだ広がっていないので、「無料で給水ができる」ということを、一緒に活動する仲間たちと広げていくことが一番近道であると思っています。

安藤:Rifillひろしまのメンバーで商店街を訪ねてリフィルスポットを開拓することを考えているのですが、サイクルオアシスを訪ねていくのもいいですね。

瀬口:多くのサイクリストがマイボトルを持っていても入れているのは買ったペットボトルの水だそうですが、水をくめるところが増えればサイクリングをする人の行動も変わると思いますか。

三島:はい、そう思います。しまなみ海道を走ると、夏場なら1日にペットボトル7本ぐらい買ってボトルに入れるんです。サイクリスト全体で考えると、ペットボトルごみの量は相当だと思います。それが給水スポットなら無料でおいしい水がもらえる。例えばチョコレートを買ったついでに水もくめる、そんなことをもっと多くの人に周知できればいいと思います。

中村:事業者目線でお話しすると、水を無料で提供する際、スタッフが案内したり、水を入れる時間も浄水器に費用もかかるので、どうぞ、と快く言える事業者は多くはないかと思います。
例えばSNSで給水スポットとして紹介してもらうだけでなく、お店の宣伝もするなど、お店にとってのメリットも考えていければ、参加したいというリフィルスポットは増えていくと思います。

瀬口:事業者の方からの視点でとても大事な部分です。リフィルスポットの活動はまさに地域の小さなお店を応援することが目的の一つなので、ぜひ登録の輪を広げていきたいと思います。

リフィルを街づくりに生かす

瀬口:リフィルを生かした街づくりができるのではないかと思います。県では実証事業などで事業者の取り組みをバックアップされていますが、リフィルの取り組みも連携して街づくりに広げていただけないでしょうか。

樽谷:まだリフィルの活動のことをよく知らない、でも環境活動をちょっとやってみたいな、という方をいかに巻き込めるかというのが大事だと思っています。
海ごみ関係のイベントを開催したときにアンケートでどんな活動がしたいか聞いてみたところ、一番に挙がったのは「海岸清掃」でした。さらに、「環境問題に関心あるけれど、スポーツや食など、他のテーマと合わせて企画してくれると、親子や友人と参加しやすい」という声がありました。
県も独自にいろいろなイベントを開催しているので、ぜひ連携し、例えば街歩きしながら給水スポットを紹介するなど、知ってもらう入り口を一緒に作れるんじゃないかと思います。

安藤:環境を良くしていきたいと思う人たちがつながることで、街が変わっていくという実感を得られると感じています。マイカップやマイボトルを持って歩く人が増えると街の風景は多分変わるんじゃないでしょうか。それを「楽しく、一緒にやりませんか」と多くの人に広げていきたいと思います。

服部:最近、企業のSDGsや「社会的責任を」ということもよく言われていますが、Refill Japanの給水スポットへの登録は単なる抽象論にとどまらない、身近で具体的なアクションであることが大きいと思います。登録店として、利用者として、発信することで伝わる意味の大きさ、広がりや価値はとても大きい。そういう意味で、今後のRefill Japanの活動に期待しています。

※ 宣言全文や当日の詳細報告などはhttps://www.refill-japan.org/news/post-1426/をご覧ください。

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