環境条約シリーズ 387ボン条約の最新動向 移動性野生動物種の危機的状況

2024年06月17日グローバルネット2024年6月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

移動性野生動物種の保全に関するボン条約の第12回締約国会議(COP12)は、「野生生物の未来は私たちの未来-野生生物と人々のための持続可能な開発」をテーマとして2017年に開かれた。マニラ宣言(持続可能な開発と移動性動物種)、渡り鳥の違法な捕殺と取引、持続可能な観光、エネルギーと移動性動物種、地元共同体参加と生活手段、食用野生水産動物、音響被害などに関する決議および海洋生物やアフリカゾウなどに関する行動計画が採択された。

COP13は2020年に開かれ、「移動性動物は地球上をつないでおり、私たちもその来訪を歓迎している」がテーマとされた。ガンディナガール宣言(ボン条約と2021年以降の世界生物多様性目標)、光害指針、昆虫の減少と移動性動物への脅威などに関する決議が採択された。また、附属書のⅠに7種、Ⅱに3種が追加された。

COP14は「自然には国境はない」をテーマとして2024年2月にウズベキスタンのサマルカンドで開かれた。世界の移動性動物種の危機的状況報告書が公表され、次のような数値が示された。附属書掲載種の20%⇒絶滅のおそれ、同44%⇒個体数の減少、同75%⇒生息地の消失・劣化・分断化、同70%⇒過剰捕獲。附属書Ⅰ掲載種の82%とⅡの18%⇒世界全体で危機的状況。移動性動物種全体⇒世界で絶滅リスク増大。附属書掲載魚種の個体数⇒1970年以降平均90%減少。附属書掲載種のうち観測対象の生息地の58%⇒持続可能でない悪影響の下。

そのほか、深海底鉱物開発(移動性動物と関連生態系に対して悪影響は生じない旨の十分な情報が得られるまでは実施・支援を差し控えること)、昆明モントリオール生物多様性枠組との連携、光害指針や観光指針の改定、生態的連接性などに関する決議、また、伝達と学習に関わる動物の文化およびその社会の複雑性が有する保全の意味付け、プラスチック汚染などに関する決定も採択された。また、附属書のⅠに10種、Ⅱに11種(重複掲載を含む)が追加された。

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