環境条約シリーズ 396国際海事機関 海洋環境保護委員会 2024年

2025年03月14日グローバルネット2025年3月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

24年3月に国際海事機関(IMO)の第81回海洋環境保護委員会(MEPC81)および9月末~10月にMEPC82が英国ロンドンで開かれた。

IMOによって23年に採択された国際海運からの温室効果ガス(GHG)削減戦略は、「GHG排出:50年頃までにゼロ」、「ゼロ排出燃料の使用割合:30年までに5~10%」を目標とし、その実現のために海洋汚染防止条約(MARPOL)を25年に改正し、27年の発効を目指すと定めていた。

MEPC81では、舶用燃料のGHG強度(エネルギー当たりのGHG排出量)の規制、船舶排出GHGへの課金とゼロ排出燃料船への還付を含む改正枠組み案が合意されるとともに、具体的措置の提案も奨励された。MEPC82では、それらの提案に基づき改正案が作成されたが、GHG強度の計算方法、規制水準、柔軟性措置の是非、途上国航路優遇の是非、船舶排出GHGへの課金の是非などは今後の検討に委ねられた。

GHG対策以外では、バラスト水管理条約の見直しについて、MEPC81-82を通じて、改正の対象、船舶の環境対策の検討の方向性などが決定され、また、バラスト水処理設備の性能維持策は検討継続とされた。なおMEPC81では、バラスト水管理条約の附属書の改正案(電子記録簿の位置付け)、また、MARPOL議定書Iの改正案(コンテナ流出の通報手続き)、MARPOL附属書VIの改正案(燃料油の定義、燃料消費実績報告)も採択された。

MEPC82では、MARPOL附属書VIの改正案(窒素酸化物・硫黄酸化物の排出規制を強化する海域にカナダ北極海域およびノルウェー海域の追加)が採択された。生態系の保全を目的とする特別敏感海域として、インドネシア・ロンボク海峡のヌサ・ペニダ島とギリ・マトラ島が指定された。また、船舶解体のための越境移動には香港条約とバーゼル条約の両方が適用され得るため、両条約の暫定実施手引き(香港条約に基づく越境移動にはバーゼル条約は影響を及ぼさないという見解を含む)が承認された。

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