環境条約シリーズ 397環境犯罪の防止 EU環境犯罪指令の改正
2025年04月17日グローバルネット2025年4月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
環境犯罪は、汚染増大、野生生物劣化、生物多様性低下、生態系攪乱などを引き起こしており、世界での年間損失額は800~2,300億ユーロと推定されている。その額は、世界の犯罪の中で、薬物取引、偽造、人身取引に次いで4番目の規模であり、年率5~7%で増加している。環境犯罪は違法薬物取引と比べて、同じくらいの大儲けになるが制裁はずっと小さく訴追されないことも多い。そのため、参入を企む組織犯罪集団を引き寄せており、さらに対策を困難にしている。
このような状況の下でEUは、現行の08年環境犯罪指令(刑法を通じた環境保護指令)を見直して、取り締まり・訴追が不十分で、加盟国間協力は弱く、抑止の役割も果たせていないことを公表した。それに基づいて24年4月に、環境犯罪の適用区分の拡大、罰則強化、法執行協力の促進・支援を目的とする改正案が採択され、同年5月20日に発効した。加盟国はその発効から2年以内に国内法を整備しなければならない。
環境犯罪の適用区分については、汚染・危険物質、有害廃棄物、オゾン層破壊物質、放射性物質などの違法な排出や取引、また、保護動植物の殺傷や取引など、従来の9区分に、違法木材取引、違法船舶リサイクル、違法取水、化学物質法違反、温室効果フッ化ガス取り扱い違反、侵略的外来種法違反、開発許可取得要件違反、環境影響評価実施違反、船舶からの汚染物質違法排出などが追加され、合計20区分に拡大された。
罰則については、比例対応・適切性、捜査協力度合い、重大性悪質性度合い(損害規模・組織犯罪・違法収益)に基づく段階的基準が示され、人の死・深刻な障害を招く場合は、10年以上の禁固刑、法人には総売上の5%または4,000万ユーロの罰金が定められた。付加的に、許可・資格取り消し、公的資金からの排除、収益没収、被害環境の復元・補償義務も定められており、刑事罰以外の処罰も認められる。また、環境犯罪の通報者や法執行への協力者に対する支持・援助の義務、解釈適用の域内調和、法執行や司法手続きに関する加盟国間協力の支援・促進も定められている。