フロント/話題と人安西美喜子さん(NPO法人コンポスト東京 代表)
2025年05月21日グローバルネット2025年5月号
都心のど真ん中の国有地でコミュニティ菜園を実現
~「原宿はらっぱファーム」が始動~

安西 美喜子(あんざい みきこ)さん
NPO法人コンポスト東京 代表
4月19日、店舗やマンションが立ち並ぶ東京・原宿の一角で、誰でも立ち寄り参加もできる、市民によるコミュニティ菜園プロジェクト「原宿はらっぱファーム」のオープニングイベントが開かれた。「やっとこの日を迎えることができた」とあいさつした安西さんはこのプロジェクトの発案者だ。
5年ほど前に原宿エリアに引っ越してきた安西さんは、自宅近くにあった空き地の前を通るたびに「ここを畑にしたいなあ」と思っていた。空き地の広さは約1,500 m2。テニスコート7面分にも相当するその広い土地は国有地で、長い間使われずにいた。
「思っているだけではいけない」と安西さんは一昨年11月、都市農業の多様な機能を発揮した取り組みを支援する都市農地活用支援センターに一人で出向き相談。その後同センターの担当者の支援を受け、関係省庁や渋谷区、地域の町内会に働きかけて交渉を重ねた。その結果、今年2月初めに「管理委託の再委託」という形でプロジェクトが実現することとなった。畑の運営は、地域住民や菜園、建築の専門家などで結成された「都市農地と防災のための菜園協議会」が渋谷区から管理委託を受けて行う。委託期間は来年1月末までだ。
プロジェクトの畑スペースには、来場者なら誰でも作業や収穫ができる「みんなの畑」のほか、講座も受けられる「学びの畑」やコミュニティコンポストも設置し参加者を公募。すでに募集人数を超える応募が集まっている。そして「実験の畑」では、廃棄された綿布団の綿や、精米店からの米ぬか、カフェからのコーヒーかす、国有地の雑草などで作った堆肥や、建設会社からの石膏ボードなど地域の未活用資源を資材として使って生育の比較実験を行う。実験結果やノウハウは社会に共有していく予定だ。さらに、近隣の学校・幼稚園・保育園の子どもたちや地域住民の菜園活動の場、また、災害に備えた顔の見えるコミュニティ作りの場としても活用し、地域のハブになることを目指している。
「人と人、人と自然がつながり、笑顔の地域循環が生まれるような活動を目指したい」と安西さん。都心のど真ん中の国有地で始まった期限付きのチャレンジが、地域循環の輪をどう広げていくか楽しみだ。(絵)