NSCニュース No. 155 2025年5月「エコアクション21オブザイヤー2024」について

2025年05月21日グローバルネット2025年5月号

NSC共同代表幹事
横浜国立大学名誉教授
放送大学客員教授
八木 裕之(やぎ ひろゆき)

エコアクション21オブザイヤー

エコアクション(EA)21認証企業を対象とした、エコアクション21オブザイヤー2024の受賞企業が公表された。

周知のとおり、EA21は日本独自の環境マネジメントシステムの認証制度である。日本でも有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示制度が2023年度からスタートしているが、EUなどでは、報告対象がバリューチェーンにまで広がっており、関連するすべての企業がサステナビリティ経営を求められるようになっている。

受賞企業に代表されるように、EA21認証企業の間でも、バリューチェーンを構成する企業としてサステナビリティ経営に取り組むと同時に、これを自社のバリューチェーンに広げる先進的な取り組みが行われている。

環境経営レポート部門は、金賞を株式会社Jバイオフードリサイクル、銀賞をコムパックシステム株式会社、有限会社藤岡保健株式会社、銅賞を株式会社常磐植物化学研究所、山本建設株式会社、西部サービスグループ、同ソーシャル部門は、金賞をコムパックシステム株式会社、銀賞を日本ゼトック株式会社、白鷺電気工業株式会社、銅賞を山陽製紙株式会社、株式会社沖縄計測が受賞し、株式会社常磐植物化学研究所、株式会社静鉄ストアが高いレベルの取り組みを続けている企業として審査委員長特別賞を受賞した。 

ここでは、それぞれの部門の金賞受賞企業の取り組みを紹介する。

株式会社Jバイオフードリサイクル

同社は、食品廃棄物からバイオガスを発生させ、再生可能エネルギーとして発電し、電力を供給するサービスを行っている。ここでは、電力ループと農業ループのダブルループによって生み出された電気と肥料を、食品廃棄物を排出した事業者に提供するサーキュラービジネスが展開されている。

電力ループでは、回収した一般廃棄物と産業廃棄物から食品廃棄物を分別し、分別された食品廃棄物を用いてメタン発酵を行い、ここから得られたメタンガスを燃料とする発電による電力と熱の供給、分別されたプラスチックを原料とするサーマルリサイクルによる電力の供給が行われている。農業ループでは、メタン発酵から発生した発酵液や脱水汚泥の一部が堆肥化されている。

環境経営レポートではダブルループを中心とした同社の取り組みが、経営戦略、目標値、実績値などを踏まえて体系的に示され、地域や関連事業者に着実に浸透していることがわかる。

コムパックシステム株式会社

同社は、段ボールを中心に、緩衝包装設計から製造・納品までを一貫して行う総合包装企業である。エコアクション21を経営の基盤に置きながら、SDGsを実現するためにVision2030を設定し、ここに、業務と関連する環境保全やSDGs達成のための取り組みとその目標となるKPIを組み込むことで、体系的なサステナビリティ経営が推進されている。

中長期的なサステナビリティ経営のVisionや計画が本業もしくは経営戦略に統合されていることから、これらの情報は多様なステークホルダーとのエンゲージメントに有効に機能している。

また、バリューチェーン上の企業と連携してサーキュラーエコノミーを推進するとともに、大学との連携により、自社の原材料ロス・端材を再生原料にした福祉関連商品の共同開発などを行っており、ステークホルダーを巻き込んだ連携やアライアンスによって、同社のサステナビリティ経営が、地域で、面的もしくはネットワーク的な広がりを見せている。

受賞企業の環境経営やサステナビリティ経営では、経営戦略との統合、リスク・機会分析、インパクト分析、バリューチェーンへの取り組みの拡大、ステークホルダーとの連携やアライアンスなどに象徴されるように、ガバナンスやマネジメントが年々進化を遂げている。また、環境とソーシャルの両部門で受賞する企業が多くあり、環境経営のマネジメントシステムがソーシャル領域を含むサステナビリティ領域全体へと広がりを見せていることがわかる。

今日、企業のバリューチェーンの広がりによって、開示制度で規定される企業だけでなく、関連するすべての企業がサステナビリティ経営とこれに関連する情報開示を求められるようになっている。受賞企業の取り組みは多くの企業にとって重要な指針となる。

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