フロント/話題と人坂手 洋二 さん(劇団燐光群 代表)
2025年07月16日グローバルネット2025年7月号
京都会議が舞台の英国発の演劇「KYOTO」を翻訳上演

坂手 洋二(さかて ようじ)さん
劇団燐光群(りんこうぐん)主宰
1997年に京都で開催された国連気候変動枠組条約の第3回締約国会議、通称COP3京都会議。この国際会議を題材にした英国発の演劇「KYOTO」を、坂手さんが率いる劇団・燐光群が、6月末から東京で翻訳上演した。本劇のオリジナル版は英国で最も権威のある演劇賞のローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされた。
COP3では、法的拘束力のある温室効果ガス排出削減の数値目標を先進国に課す「京都議定書」に合意、気候変動に世界が一致団結して取り組むスタート地点となった国際会議と評されている。日本では、COP3がなければ現在の気候変動関連の市民活動の基盤はできなかったと振り返る関係者もいる。
「KYOTO」では、温暖化対策の進展を妨げようとする大手石油会社に雇われたロビイストを進行役に、主要参加国の英国、ドイツ、米国、温暖化の影響を受けるキリバス、産油国サウジアラビアや途上国の中国、そしてホスト国の日本など14人の主要キャストが各国の主張を繰り広げる。COP3に至るまでのいきさつから会期中に繰り広げられた実際の出来事そのものを並べ、展開する「報告劇」という手法がとられている。「日本でこの劇をやるかもしれないから一緒に翻訳しよう」と英国版に出演した俳優に言われ、坂手さんが日本上演も手掛けることに。これまで欧米での公演も行い国際的に活躍、数々の演劇賞を受賞してきた坂手さん。戦争やダム問題など社会問題を題材に、観客に問いを投げかけるという坂手さんの演出スタイルは、COP3を振り返るのにうってつけだといえる。
「人間同士が向き合い、立ち続けるところから何かが生まれることを信じようという希望が見える」と、坂手さんは本劇の魅力を語る。京都議定書の後継となるパリ協定からの離脱を宣言したトランプ米大統領の出現で、世界の環境活動は逆風を受けている。そんな今だからこそ観る人が受け取るものは大きい。
「絶対に無理だと思っていたことを実現することができるんだ、というのが『KYOTO』のテーマ。若い人たちにも見て感じてほしい」と力を込めた。
公演は7月13日まで。(希)