フロント/話題と人正木 明(気象予報士、防災士)

2025年08月13日グローバルネット2025年8月号

「温暖化指数」を使った天気予報で気候変動による影響を視聴者に伝える

正木 明(まさき あきら)さん
気象予報士、防災士
「おはよう朝日です」で天気予報を伝える正木明さん(提供:ABC テレビ)

猛暑や豪雨などの異常気象が頻発する中で、それらの現象は「温暖化が影響している」と視聴者に認識し、気候変動への関心を高めてもらいたいと、関西ローカルの朝の情報番組「おはよう朝日です」の天気予報で昨年秋から「温暖化指数」を伝えている。米国の研究機関のデータを引用し、その日の気温がどれくらい温暖化の影響を受けているのかが色分けして示されている。視覚的にわかりやすく、日々の天気予報の中で気候変動との関連に触れる、国内で数少ない取り組みだ。

正木さんは神奈川県鎌倉市で育った。趣味のサーフィンをきっかけに波や風に興味を持ったことから、気象に関する仕事に就き、1990年に同番組のお天気キャスターに抜てきされた。「朝の顔」となって今年で36年目を迎える。1997年に京都で気候変動枠組条約締約国会議が開催されたことで気候変動に関心を持ち、その後毎日伝える天気予報でも気温上昇や、大型の台風による被害など、当時予測されていた気象現象が現実のものとなっていることに危機感を募らせてきた。

そこで、「視聴者に天気予報をきっかけに気候変動に興味を持ち、日々の行動につなげてもらいたい」と温暖化指数の利用を提案。正木さんの思いが番組のスタッフらに理解され、実現に至った。しかし時間の制約などさまざまな要因から「気候変動について伝えたくても伝えられない」と悩みを持つ気象予報士も多いことから、正木さんは気候変動に危機感を持つ気象予報士や気象キャスターと共に「チームWFCC(Weather Forecasters against the Climate Crisis)」を結成。呼びかけ人・賛同人としても活動している。

さらに正木さんは「子どもたちに直接伝えたい」と小学校などでの出張授業を行う「地球ラボ」を2022年から開始。授業では科学的なデータを用いて気候変動の現状と将来予測を伝え、日常の必要な行動などについて子どもたちと一緒に考える。これまでに40校を超える学校を訪れ、参加者は5,300人以上に上る。講師費用は求めず手弁当でのプロジェクトだ。

「私の使命は気候の危機を次の世代に伝えること。呼ばれればスケジュールを調整してどんどん出張します。これはライフワークです」と力を込めた。(M)

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