環境ジャーナリストからのメッセージ~日本環境ジャーナリストの会のページ高知県土佐市 崩壊土砂流出危険地区に計画された宇佐メガソーラー

2025年08月13日グローバルネット2025年8月号

環境教育インストラクター
舞 はるり(まい はるり)

メガソーラー計画

高知県土佐市宇佐町。目の前に広がる雄大な土佐湾。温暖な黒潮の恵み、豊かな漁場がある。この土佐湾を臨む風光明媚な山々の一つにメガソーラーが建設中と聞いたのは2022年。宇佐メガソーラーと地元の方は呼んでいる。一般的にメガソーラーとは発電規模が1,000kWを超える大規模な太陽光発電システムのことをいう。宇佐のメガソーラーの規模は9.6ha、太陽光パネル2万6,000枚、出力7,300kW、立派なメガソーラーである。このメガソーラーの計画について地元の「宇佐の自然を守る会」の皆さんが安全性に懸念を持ち、地元住民、地元議員らと高知県に相談を繰り返していた。

明るみになった懸念事項

2025年現在、工事が中断している。懸念事項とは何か、地元「宇佐の自然を守る会」の方に話を伺った。

まず、急斜面に設置するということ。平均斜度34度、最大40度以上の場所もある。次に土壌の柔らかさ。事業者が行ったボーリング調査の結果から技術士が土砂崩れの指標となる安全率を計算すると、尾根で降雨量がない状態で1.07。通常は崩れにくい山で1.4はある。さらに雨が降り地下に30 cm水がたまったと推定した場合0.95。尾根の状態でこれだけ低いと他はもっと低いだろうと考察していた。実際に設置場所は以前、土砂崩れを起こしている場所であり(2014年の台風による土砂崩れで下流域689名に避難指示が発令された)、また2022年設置場所付近でも大雨による巨岩の落石が報道されている。

さらに問題がある。高知県では大規模太陽光発電計画の開発許可にあたり「太陽光発電設置・運営のガイドライン」を定めているが、宇佐のメガソーラーの計画地は、そのほとんどが太陽光発電の設置を避けるべき「崩壊土砂流出危険地区内」である。ところが、開発許可を審議する森林審議会森林保全部会にその旨の情報が共有されず許可が下りてしまったというのだ。審議会では過去に土砂崩れがあった場所だと指摘する意見もあったが、土砂崩れ防止の措置をするという説明があり結果として許可が下りてしまった。住民の説明会でも情報は伏せられていた。県知事はその後の議会答弁でガイドラインは法律でないので公表されなかったが、不親切であり反省点であると述べている。その後、工事は開始されたが、事業者は工事前に調整池を完成させる許可条件を遵守せず、同時進行と計画を変えていた。これについては守る会の指摘により計画が見直され、工事前に調整池は完成している。その他にも工事中、計画地以外の1,235m2もの残地森林を伐採する誤伐採が確認された。誤伐採と認めながら事業者はその場所に太陽光パネルを並べると説明したそうだ。また保険についても問題が発覚。設置工事中に災害が起きた場合の保障が下請け工事会社には下りないことが判明した。こうして懸念事項が多い中、2023年3月末に開発許可の期限が切れた。が、事業者からは計画延長の届け出の提出はない。実際の作業も中断している。

全国の共通の課題として

再生可能エネルギーとしての太陽光発電システムは気候変動対策として推進され、脚光を浴びてきたが、近年では森林破壊・自然破壊、景観悪化などの理由から「ノーモアメガソーラー」と声を上げる自治体も現れ出した。今回の高知県宇佐町は住民が事業に目を光らせ、行政と粘り強く話し合いを繰り返してきた。現在、メガソーラー設置について設計、施工のガイドラインはあるものの、設置基準もなく、環境アセスも限定的。設置事業者の免許制度もない。森林法等だけでは到底網羅できず、不十分に思う。専門の法整備が急務だ。なぜならメガソーラー問題はこの国土の狭い日本における全国共通の課題だからだ。

ネイチャーポジティブの現代。森や自然の大切さが改めて認識されている。特に森の役割、すなわち森の保水性、生物の住処(生物多様性)、二酸化炭素固定、酸素の発生源、森林資源(水源を含む)など、森が私たちの命を担っていることを学ぶべきである。

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