INSIDE CHINA 現地滞在レポート~内側から見た中国最新環境事情第91回 2024年中国環境白書から
2025年08月13日グローバルネット2025年8月号
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長
小柳 秀明(こやなぎ ひであき)
6月5日は世界共通の「環境の日」であるが、中国でも中華人民共和国環境保護法第12条で「毎年6月5日を環境の日とする」と定めている。今年もこの環境の日に2024年の環境の状況等について記した環境白書(2024中国生態環境状況公報)が発表された。今年の発表のセレモニーは重慶市で大々的に行われたが、白書の概要と全文は即日、中国生態環境部のウェブサイトで公開された。
今年の白書の特徴は、昨年と比べて全体のボリュームが倍増したことと(76→145ページ)、2035年長期目標を若干意識した記述が見られることだ。前者では、本文の説明以外に図表・写真とコラムが充実した。特に例年にない多くの写真が掲載された。また、後者では、これまで環境基準達成状況の評価の判断基準としていた国家二級基準だけでなく、一部の項目で国家一級基準との比較も行われるようになった。例えば、PM2.5の年平均値の国家二級基準は35μg/m3だが、国家一級基準は15μg/m3であり、この一級基準は日本等先進国の環境基準と同レベルである。国家一級基準と比較評価するということは、深読みすれば将来のより高い目標、すなわち2035年長期目標達成へ向けて新たな一歩踏み出したことを示唆するものと思うが、どうであろうか。
白書の全体構成は、総説(5)のほか、①大気環境(29)、②水生態環境(39)、③海洋生態環境(21)、④土地と農村生態環境(6)、⑤自然生態(17)、⑥音環境(6)、⑦放射線環境(5)、⑧気候変動と自然災害(8)、⑨固体廃棄物と化学品(8)の各論9項目および編纂説明(1)から構成されている(注:かっこ内の数字はページ数)。それでは今年の白書から重点的に記述されている大気環境、水生態環境等を中心に概要を紹介することとしたい。
大気環境
第14次5ヵ年計画(2021–25年)期間中、全国の339都市に合計1,734ヵ所の国家都市環境大気質モニタリングポイント(注:日本の国設測定局に相当)を設置している。2024年の大気環境の具体的状況について、全国339都市でのモニタリング結果を総括すると、主要汚染物質6項目(微小粒子状物質(PM2.5)、粒子状物質(PM10)、二酸化硫黄(SO2)、二酸化窒素(NO2)、オゾン(O3)、一酸化炭素(CO))の環境基準(注:国家二級基準)をすべて達成した都市の割合は65.5%(222都市)であり、前年より5.6%(19都市)上回った。34.5%(117都市)が基準未達成であったが、その内訳を見ると87都市(25.7%)がPM2.5未達成、81都市(23.9%)がO3未達成、40都市(11.8%)がPM10未達成であった。SO2、NO2およびCOはすべての都市で達成していた。
全国339都市の優良天気の日数(環境基準達成日数)の割合は平均で87.2%であり、前年を1.7ポイント上回った。基準を達成できなかった12.8%の日の未達成の原因となった主要汚染物質はO3が45.3%、PM2.5が39.1%、PM10が15.7%、NO2が0.1%で、SO2とCOが主要汚染物質の日は出現しなかった。2016年以降、全国の優良天気日数の割合は全体的に見て上昇傾向にあり、2024年は2016年と比べて4.1ポイント上昇した。全国の砂塵の舞う異常な天気により基準を超過した割合は1.9%で、そのうち、重度汚染以上の日数の割合は0.4%であった。
2024年の全国PM2.5年平均濃度は29.3 μg/m3で、2016年から2024年までの年平均濃度の推移をみると持続的に改善傾向にあり、2024年は2016年と比べて30.2%低下した。2020年以降継続して国家二級基準(年平均値35μg/m3)を達成している。31の省別にみると(注:自治区、直轄市を含む)、9つの省のPM2.5年平均濃度が国家二級基準を超え、2つの省のPM2.5年平均濃度は国家一級基準(15μg/m3)より低かった。
酸性雨
水素イオン濃度(pH)が5.6未満の降雨を酸性雨に分類している。2024年は全国の503都市(一部の県レベルの市も含む)の約1,000ヵ所の降水モニタリングポイントで酸性雨を観測した。2024年の全国の酸性雨地域の面積は約44.2万km2で、陸域国土面積の4.6%を占め、前年とほぼ同レベルであった。このうち、pHが5.0未満の比較的深刻な酸性雨地域の面積は0.1%であった。pHが4.5未満の非常に深刻な酸性雨の発生はなかった。酸性雨の主要な分布地域は長江の南から雲南省・貴州省高原より東側の地域であり、浙江省の大部分の地域、江西省の中部と南部、福建省の北部と中部、広西自治区の東北部と南部、広東省の中部を含んでいる。その他湖南省、重慶市、上海市および江蘇省の一部地域を含んでいる。
上述の503都市でモニタリングした降雨のpH年平均値の範囲は4.62から8.70で、平均で5.71であった。前年より0.03ポイント下降した。酸性雨が発生した都市と比較的深刻な酸性雨が発生した都市の割合はそれぞれ12.5%と0.8%であった。2016年から2024年の間の変化を見ると、全国の降水のpH年平均値は5.45から5.71に上昇している(注:酸性度が低下している、すなわち改善しているということ)。また、2024年の全国の酸性雨発生頻度は平均8.5%で、前年より0.9ポイント上昇した。酸性雨発生頻度が25%以上、50%以上、75%以上の都市の割合はそれぞれ13.7%、6.6%、2.2%であった。
水生態環境
第14次5ヵ年計画期間中、全国の3,641ヵ所に国家地表水環境質評価等モニタリング断面(ポイント)を設置している。河川が3,293ヵ所、湖沼(ダム湖を含む。以下同じ)が348ヵ所である。このうち、2024年に実際に観測されたのは3,629ヵ所であった。地表水の優良(Ⅰ~Ⅲ類)水質(注:飲用水源一級または二級相当の水質)の割合は90.4%で、前年と比べて1.0ポイント上昇した。劣Ⅴ類の水質(注:最も悪いランクの水質)の割合は0.6%で、前年と比べて0.1ポイント下がった。2016年以降で比較するとⅠ~Ⅲ類水質断面の割合は67.8%から90.4%まで、22.6ポイント上昇した。劣Ⅴ類の水質断面の割合は8.6%から0.6%まで、8.0ポイント下がった。
流域別にみると、長江流域、黄河流域、珠江流域等はいずれも全体として「優」(注:飲用水源一級相当の水質)の水質で、長江主流では観測した82ヵ所すべてのポイントで5年連続Ⅰ~Ⅱ類の「優」の水質であった。黄河主流も観測した42ヵ所すべてのポイントで前年同様Ⅰ~Ⅱ類の「優」の水質であった。
湖沼についてみると、210の重要湖沼のうちⅠ~Ⅲ類水質の湖沼は77.1%で、前年より2.5ポイント上昇した。劣Ⅴ類水質の湖沼は4.3%で、前年より0.5ポイント下がった。かつて水質汚濁(富栄養化)が著しかった三大湖沼(太湖、巣湖、デン池)はいずれも軽度汚染の状況であった。
地下水については、第14次5ヵ年計画期間中、全国の1,912ヵ所に国家地下水環境質評価ポイントを設置している。このうち、2024年に実際にモニタリングが行われたのは1,883ヵ所であり、Ⅰ~Ⅳ類水質の割合は77.9%(前年は77.8%)、Ⅴ類(注:生活飲用水水源に適さない水質)が22.1%を占めた。
土地と農村生態環境
土壌環境質については、全国の汚染を受けた耕地の安全利用率は92%に達し(前年は91%)、農用地の土壌環境状況は全体として安定している。土地生態環境状況については、まず水土流失に関しては2024年の水土流失動態モニタリングの成果を引用すると、全国の水土流失面積は約260万km2、そのうち水力による浸食面積は約105万km2、風力による浸食面積は約155万km2であった。次に荒漠化および砂漠化に関しては、全国の荒漠化した土地面積は約257万km2、砂漠化した土地面積は約169万km2であった。このうち明らかに砂漠化が進行している土地面積は約28万km2で、陸域国土面積の2.9%を占めた。
海洋生態環境、自然生態、音環境、放射線環境、気候変動と自然災害等その他の項目については、紙幅の関係で概要の紹介は省略する。
