フォーラム随想私の資料整理法

2018年01月16日グローバルネット2018年1月号

地球・人間環境フォーラム理事長
炭谷 茂(すみたにしげる)

環境事務次官を退官した後、環境、医療、福祉、人権の4分野の仕事をしてきた。仕事の内容は、サービスの提供、研究、執筆、講演などである。このためにたくさんの資料が自然とたまっていった。

もともと整理整頓は苦手だったし、整理する時間的余裕がなかったので、適当に資料を山積みにしていた。

いざ必要となった資料を探すとなると大変である。半日かかることもあった。最初から探すことを諦めて、同じ資料を持っていそうな人に尋ねることもあった。

若いころは乱雑に重ねていても、だいたいどこにあるか記憶していた。年齢を重ねるにつれ、記憶が頼りにならなくなった。「ここに置いたはずだが…」と思っていても、見つからない。

その上、多分野にまたがるようになって量も各段に増加した。公務員時代であれば、誰かがきちんと保管しているからそれで足りた。退官後は個人営業である。

書籍であれば、図書館で借りればよいが、ネットなどでは得られない数枚の調査報告や施設の経営概況などの資料が有益である。

これをどのように整理するか、ここ10年来の私の課題だった。

 

昨年3月末、私の友人の大学教授は、母の介護のために定年前に退職した。研究意欲は,依然旺盛である。大学の研究室に7千冊の本を持っていたが、自宅に置くと家が壊れる心配がある。

そこで彼は、本を1枚ずつバラバラにして、パソコンでUSBに保存するという挙に出た。割かれた本は、廃棄し、7千冊の本は小さなUSBに収まった。その作業は、大変な労力だっただろう。しかし、いったんUSBに保存してしまえば、本を検索するのは楽だろう。

私もいろいろと模索してきた。私の資料整理法の条件として

  1. 整理に手間がかからない
  2. お金がかからない
  3. 広いスペースが要らない

の三つに加え、必要な資料が容易に取り出せることだ。

以前は、コクヨの紙製ファイルにとじ込んで整理することが多かったが、とじるのに大変時間がかかる。どんなファイルを作ったかも忘れてしまう。ファイルを立てる本箱のスぺースを取ることもできないので、床に積み重ねると、下になったファイルは、永遠の眠りについた。

 

このようにいろいろな方法を試しては、放棄した。整理に関するノウハウ本を読んだが、私には役に立たない。

断捨離という言葉が流行したが、これは思い切って捨てることが中心になる。これでは肝心の仕事ができない。

そのような状況の中、私に最も適した方法についにたどり着いた。

昨年8月から実施している単純な方法である。どこでも使用しているA3の大型封筒にひと固まりの資料を入れる。一つの袋があれば、60分の講演が行える中身である。使用済みの封筒でも構わない。封筒の表に内容を記載する。

袋を積み重ねておく場所を20ヵ所程度決めた。それぞれ場所に名前を付けた。「床1」という具合だ。

次が重要だ。USBに作った袋の名と収納した場所をインプットした。これを私の仕事に応じて「気象」、「パリ協定」、「農福連携事業」など自分だけにわかる体系で整理している。

すでに袋は、300枚を超えた。すべての袋に記載された名を記憶することは困難だが、USBを開けば、どんな袋が作られ、どこに保管されているかわかる。資料を追加して収める場合も、封筒の所在も簡単にわかる。

何よりもこの方法の優れた点は、USBを開くと、整理されている体系項目の内容がわかり、自分の現在の仕事状況が把握できることだ。「こんなにたくさん仕事をしているのか」と悦に浸る。

この方法を用いるようになって、私のストレスは大幅に解消された。袋が千枚を超える日も遠くないが、探す苦労は不要である。

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