特集/水Do!フォーラム2018報告 海ごみから考える脱使い捨てと水のエシカル消費報告 欧州における使い捨てプラスチック削減の取り組み

2018年05月15日グローバルネット2018年5月号

水Do!ネットワーク事務局長
瀬口 亮子さん(せぐち りょうこ)

近年、海洋ごみの問題は深刻化に歯止めが掛からず、いまや国際社会が緊急に取り組むべき課題の一つとなっています。中でもその多くを占めるプラスチックごみの削減が求められ、ペットボトルはレジ袋とともに対策を取るべき主要品目とされています。本特集では、使い捨て容器入り飲料の利用を減らし水の域産域消を推進している「水Do!ネットワーク」が、今年2 月22 日に東京都内で開催した「水Do!フォーラム2018」での講演と欧州調査の報告、また異なる分野でこの問題に取り組む団体による発表の概要を紹介します。(2018 年2 月22 日、東京都内にて)

 

昨年9月にイギリスのロンドンとブリストル、そしてフランスのパリの3ヵ所に行き、行政機関やNGOなどへのヒアリングや、現地の水飲み場の設置状況を調査して来ました。

ヨーロッパでは、使い捨てプラスチックの削減に関する政策や取り組みが加速しています。その要因および背景には、地球温暖化対策、国連持続可能な開発目標(SDGs)、サーキュラーエコノミー戦略、海洋プラスチックごみ問題や、今年1月に始まった中国のリサイクル資源の輸入禁止措置などがあります。そして欧州連合(EU)が加盟国をけん引する形でさまざまな指令や方針を出し、状況が大きく動いているのです。

レジ袋に対する規制

2015年4月、欧州議会はEUレベルでレジ袋の使用を削減する指令改正案を承認しました。加盟国の中には、すでに袋の有料化やプラスチック袋の使用禁止などを法制化している国もありますが、いまだ策を取っていない国もあります。指令では、未対応の加盟国に対して、①市民1人当たりの軽量レジ袋の使用量を2019年までに平均90枚以下、2025年までに40枚以下とするための措置を取る、もしくは②2018年までに有料化する、のいずれかを選択するように求めています。

イギリスでは2007年に小売業協会と環境省の間で自主協定を結び、最終的に2006年度対比70%削減を目標に、具体的に年度ごとの段階的な削減目標を設定して実施しましたが達成できず、強制的に有料化が導入されることになりました。2008年11月に、世界でも画期的な気候変動法という法律が成立し、その中で使い捨て買い物袋の有料化の手続きを規定、ウェールズ、北アイルランド、スコットランド、イングランドそれぞれで有料化や課税を開始しました。

フランスでは昨年1月からプラスチック製レジ袋の提供が禁止されたのですが、これを決めたのが2015年に成立したエネルギー転換法でした。低炭素社会にシフトする施策の一つとして廃棄物の削減を位置付けており、レジ袋の使用禁止を定めています。禁止されているのは、堆肥化可能なものを除くプラスチック製の厚さ25ミクロン以下の袋です。それ以上の厚さのものは、リユースされるとみなされ使用規制も有料化の規定もありません。また、野菜や果物などの量り売り用の袋や新聞、広告のプラスチック製の袋については2017年1月から提供禁止となり、生分解するものや紙袋の使用にシフトしています(写真)。

スーパーの野菜売り場の紙袋(パリ市内)

使い捨てカップなどに対する規制

さらに、このエネルギー転換法によって、2020年1月1日から使い捨てプラスチック製カップ、皿の提供が禁止されることになりました。しかし、堆肥化可能なプラスチックや「容器包装」は規制の対象外とされています。したがって、飲食店やイベントなどで使われるものは容器包装と見なされ対象にならず、実際に対象となるのは市民がピクニックなどで使うような家庭用のもので、全体の5%程度だそうです。ナイフやフォークなどのカトラリーについては、法案では対象として議論されましたが、今回の法律には入りませんでした。

一方イギリスでは今年1月、スターバックスなどコーヒーチェーン店などの使い捨てカップについて、下院の環境監査委員会が25ペンスの課金を提案しており、今後に注目しています。

その他、フランスでは生物多様性・自然景観回復法(2016年成立)において、化粧品などに含まれるマイクロビーズを使った商品とプラスチック製綿棒の販売をそれぞれ2018年、20年から禁止することにしました。綿棒とは意外ですが、ヨーロッパでは綿棒や生理用品をトイレに流すことが多いらしく、海ごみのトップ10の中に入っているそうです。

ペットボトルに対する規制

パリ市では、2006年から市役所内でペットボトル入り飲料水の利用を廃止しました。

イギリスでも、NGOによるペットボトル削減キャンペーンが展開され、昨年には大ロンドン市議会環境委員会が市の施設・イベントでの不使用、水飲み場の増設などのペットボトル削減のための具体策を提案、市の環境戦略に組み込まれました。

ブリストル市の市民団体City to Seaは、2015年にブリストル市が「欧州グリーン首都」を受賞した際、その活動の一環として「リフィル・キャンペーン」を始めました。これは水飲み場を増やすだけではなく、市内の飲食店やカフェなどで、誰でも無料で給水してもらえる給水スポットを増やそうという活動です。現在、市内約300店舗が参加し、飲食や買い物をしなくても無料で給水することができます。

水飲み場や給水スポットは、スマホのアプリで探すことができ、実際に給水するとポイントが付与され、SNSと連動して他の人とのコミュニケーションもできます。このアプリはメディアでも紹介され、イギリス国内の他の都市にも広がっているということです。

それからもう一つ紹介したいのは、パリ水道局の取り組みで2005年から飲食店にオリジナルの水差しを配布し、水道水の提供を推奨し、定着させてきました。水飲み場の設置も積極的に進めていて、現在パリ市内にはすでに1,200ヵ所もの水飲み場が設置されており、2018年にはさらに40ヵ所新設するそうです。市民の要望も聞きながら設置し、生活困窮者への水の提供も目的の一つだということです。

セーヌ川沿いの水飲み場。デザインもさまざまで、中には炭酸水が出るものもある

ヨーロッパから学ぶこと

ヨーロッパから学ぶことは幾つもあります。資源の節約だけでなく、気候変動や持続可能な消費と生産、海洋保全など、幅広い観点からのアプローチがあるということ、また、レジ袋の例のように、国によって対象範囲や手法について異なる選択をし、農業戦略などとセットで戦略が立てられているということ、さらに、NGOのキャンペーンが政策にも影響し、一定数以上の署名が集まると必ず国会で議論しなければいけないということも見習いたいです。

日本ではやっと使い捨て型の消費と生産の在り方を見直し始めたところだと感じています。今後、さまざまな主体と連携して活動をさらに進めていきたいです。

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