特集/水Do!フォーラム2018報告 海ごみから考える脱使い捨てと水のエシカル消費発表3 プラスチック海洋ごみ問題への取り組み

2018年05月15日グローバルネット2018年5月号

日本プラスチック工業連盟 専務理事
岸村 小太郎さん(きしむら こたろう)

近年、海洋ごみの問題は深刻化に歯止めが掛からず、いまや国際社会が緊急に取り組むべき課題の一つとなっています。中でもその多くを占めるプラスチックごみの削減が求められ、ペットボトルはレジ袋とともに対策を取るべき主要品目とされています。本特集では、使い捨て容器入り飲料の利用を減らし水の域産域消を推進している「水Do!ネットワーク」が、今年2 月22 日に東京都内で開催した「水Do!フォーラム2018」での講演と欧州調査の報告、また異なる分野でこの問題に取り組む団体による発表の概要を紹介します。(2018 年2 月22 日、東京都内にて)

 

日本プラスチック工業連盟(プラ工連)は、石炭化学の時代である1950年に「プラスチック協会」として発足、その後、石油化学工業が本格化して会員も増え、1962年に「日本プラスチック工業連盟」に改称しました。97会員が加盟し、うち約半分が団体、その下にいろいろな企業が加わっています(2017年12月21日現在)。

国際的なプラスチック業界の取り組み

アメリカ化学工業協会(ACC)のプラスチック部門と、欧州の業界団体のプラスチック・ヨーロッパが中心となって、2011年に「海洋ごみ問題解決のための世界プラスチック業界団体による宣言」を起案、現在世界で35ヵ国、68団体が署名・参加しており、日本からは当連盟が2011年に署名しています。最近はアジアからの署名・参加も多く、中国の団体も参加しています。

さらに当連盟は2016年まで「プラスチック及びサスティナビリティに関する国際会議」であったGlobal Plastics Allianceにプラスチック循環利用協会とともに参加し、世界の業界団体と情報交換しています。最近は、海洋ごみ問題や廃棄物管理、広報・啓発が大きなテーマとなっており、2013年からはアジア地域で会議が開催されています。

プラ工連の取り組み「海洋ごみへの取り組み宣言運動」

環境NGOのJEANが1991年に全国の海岸や河川敷で樹脂ペレットが大量に落ちていることを確認してから、業界として樹脂ペレットの漏出防止に取り組んでいます。漏出防止マニュアルやポスターの作成、冊子の配布、事業所に対する樹脂ペレット漏出防止対策に関するアンケート調査を実施してきました。

また、川ごみ・海ごみ問題に取り組んでいる環境NPOを支援したり、最近では同じ業界の方に対してもほぼ月2回のペースで海ごみ問題について講演しています。

さらに、新4ヵ年計画(2017~20年度)の中に、「海洋ごみへの取り組み宣言運動」や、樹脂ペレットの漏出対策の徹底、海洋ごみセミナーの開催など、海洋ごみ問題を大きく取り入れています。

「海洋ごみへの取り組み宣言運動」は、「自分たちが使用するプラスチック原材料やそういった製品が海洋ごみにならないように努力します」という簡単な宣言書を用意し、賛同した企業や団体のトップ、会社の社長などに署名してもらい、トップダウンで自主的に取り組んでもらうものです。まず、会長選出3社(三菱ケミカル、住友化学、三井化学)の社長に署名してもらってから、会員企業・団体で、さらには会員外にも参加を要請しようと考えています。

自主的活動の具体例としては、海洋ごみになりにくい製品の開発・販売方法の検討、製品取り扱い注意事項に「海洋ごみ防止」の観点を入れる、自社製品の販売の際に、当該製品が海洋ごみにならないよう取り扱うことを依頼・確認する、また、排水溝への金網の設置やマニュアルの整備、作業者の教育、樹脂ペレット出荷用袋の漏出防止注意表示など樹脂ペレット漏出防止のための取り組むも考えられます。

さらに、海洋ごみ・川ごみ問題に取り組んでいるNPOなどの活動の後援や、クリーンアップ活動などに参加することにより、この問題に対する意識が芽生えてくるのを期待しています。また、CSR活動の一環としてのごみ拾いも単なるごみ拾いではなく、ごみを拾うことで川のごみが減り、海のごみも減る、という意識を持ってもらえるといいと思います。

今後の目標

企業・団体が海洋ごみの削減・防止のために日常的・自主的に取り組んでいくことを目指しています。目標の達成に向けて、企業・団体に行動への参加を呼び掛け、参加企業・団体名をホームページや講演会などで公表したいと考えています。さらに、優れた事例などの情報を集め、環境省や経済産業省、研究者や海外の業界団体などへの広報活動も進めていきたいと考えています。

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