つなげよう、支えよう森里川海第21回 アンバサダーの情報発信による森里川海プロジェクト啓発活動について

2019年03月15日グローバルネット2019年3月号

一般社団法人the Organic 代表理事
全国有機農業推進協議会 理事
森里川海アンバサダー

小原 壮太郎(おばら そうたろう)

●MOTHER EARTH&森里川海プロジェクトの連携

2016年11月に私をはじめ、森里川海プロジェクトの思いに共感するアーティスト、モデル、タレント、アナウンサー、イラストレーター、料理家、農家、社会起業家等、ソーシャルアクティビストチームMOTHER EARTHの仲間たちがそろって本プロジェクトのアンバサダーに任命された。それぞれが常日頃からサステナブル、エシカル、ホリスティック、ウェルネス、オーガニック、ヴィーガン等をテーマにさまざまな事業・社会活動に取り組んでいる。今回はその事務局長という立場で、SNSやイベントを核としたわれわれの情報発信の取り組みについて説明したいと思う(写真1)。

写真1:森里川海アンバサダーでもあるソーシャルアクティビストチームMOTHER EARTH のWEB サイト

●情報発信への取り組みと変遷

現在はフェイスブック、インスタグラム、ツイッター、ブログ等のSNSを中心に情報発信を展開しているが、元はと言うと小川町オーガニックフェス(埼玉県小川町)をはじめ、MOTHER EARTH FES(東京都江東区)、熊谷圏オーガニックフェス(埼玉県熊谷市)、FREEDOM aozora(宮崎県青島)等の数千~数万人規模の主催・共催イベントにおいて、ライブパフォーマンスやトークセッション、「学び」や「体験」を提供するブース展開などを通じて、森里川海を支える自然の循環を再生・保全し、支えていくようなオーガニック&ナチュラルなライフスタイルを啓発してきた(写真②)。そこに集うアーティスト、モデルやタレント等も輪に加わり始め、自然発生的にインフルエンサー(世間に与える影響力が大きい行動を行う人物)が集うソーシャルアクティビストチームが形成されていった。そこでそれぞれのメンバーがSNSのフォロワーに対して情報発信していくことで、数十万~数百万人規模のコミュニケーションが可能であることが判明し、現代ならではの強力なコミュニケーションを生かした啓発活動をしていこう、という流れが生まれた。

写真2:小川町オーガニックフェスの風景

●SNS情報発信の進化への挑戦

2016年当初は、アンバサダーメンバーたちが思い思いに自身のSNSを通して、情報発信を試みたが、「♯森里川海」のようなハッシュタグ(SNSで投稿をカテゴライズして検索を容易にするキーワード)を付けて投稿することで、宣伝投稿のように捉えられるためか、エンゲージメント率(ユーザーが投稿に対して反応を示した割合を示す値)が日常の投稿に比べて低くなる傾向が見えた。

そこで2018年度の情報発信に際しては、MOTHER EARTHメンバーの鎌田安里紗氏が慶応義塾大学大学院で研究を続けているコミュニケーション手法「パターン・ランゲージ(以下、PL)」(下記※を参照)に注目。同氏を中心にメンバーが一丸となってワークショップ(WS)を開催し、PLを開発した(写真③)。

写真3:パターン・ランゲージ考案WS の風景

また、このWSには元モーニング娘。の市井紗耶香氏や、モデルでありビューティーフード研究家の室谷真由美氏など、共感する新しいインフルエンサーたちも参画し、WS自体も大いに盛り上がった。これにより、メンバー自身にも一層のプロジェクト理解が促され、ライフスタイルの変革につながる情報発信をより能動的に行えるようになった(図)。

▲図  生み出されたパターン・ランゲージの一例「わたしになるごはん」

またSNSで発信したPLをイベントの場でもパネル展示し、参加者が自発的に考え、ライフスタイルの変革に向けた一歩となるアクションを起こすきっかけを提供していくことで、インターネットとリアルの両面での複合的なアプローチをもたらすことに成功した。

類似する成功事例として挙げられるのは、雑誌&WEBメディアを展開する「NEXTWEEKEND」の戦略的ハッシュタグによる「自発的な模倣投稿」の誘発である。この取り組みはムーブメントを起こすことに成功し、現時点で「♯週末野心」は12万件超、

「#カスタマイズエブリデイ」に至っては22万件超という拡散を実現している。

文章だけでは伝わりづらい、もしくは理解されづらい内容も、PLの「標語+イラスト」というシンプルな構成要素により、瞬時にかつ老若男女を問わずに認知されることもPLを活用することの大きなメリットであった。

このPLを活用したSNS等による情報発信を核とした啓発戦略は、KPI(目的が達成できているかをチェックするための値)としたエンゲージメント数を大幅に向上し、目標達成率139.5%という結果につながった。

●これからの展望

PLという新たなコミュニケーションの手法を取り入れ、成果を上げることに成功したが、これを国民的なムーブメントにまで押し上げることがわれわれの最終ゴールであり、使命である考える。

インターネットとリアル、両面における「コミュニケーション」と「体験」の提供を継続していきながら、より効果的な手法の開発や、改善に取り組んでいく所存である。

またソーシャルアクティビストチームMOTHER EARTHも「つなげよう、支えよう森里川海」もともに「草の根的活動」も大切にしながら、より一層多くの人びとに認知を拡大し、理解を深め、大きな共感のうねりを生み出していくべく、さらに多様な主体と連携していくことに積極的に取り組んでいきたいと考えている。

*経験則を言語化して共有する方法で、情報の受け手に対してアクションを促すコミュニケーション手法。その作成プロセスにおいては理念からのトップダウン的な言葉づくりではなく、実際に暮らしの中でどのような良い行動が行われているのかという実践を集め、ボトムアップに言葉を生み出していくものであり、社会と思考における自生的秩序の形成を支援する「言語メディア」であると同時に、創造における自生的秩序の形成を支援する「発見メディア」でもある。

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