環境条約シリーズ 327キガリ改正と国内法の整備

2019年06月14日グローバルネット2019年6月号

前・上智大学教授 磯崎 博司(いそざき ひろじ)

モントリオール議定書のキガリ改正(2016年)は、オゾン層破壊物質ではないが温室効果の強い18種類のハイドロフルオロカーボン(HFC)を規制対象に追加し、その生産・消費量の削減を定めた(本誌2017年2月)。同改正は、20ヵ国以上の締結という発効要件を満たし、2019年1月1日に発効した。

日本においては、同改正の国会承認(2018年6月29日)および受諾(12月18日)と並行して国内法整備が進められた。まず、同改正に則してオゾン層保護法が改正され(7月4日)、特定フロンに対する現行規制と同一の措置がHFCに対しても適用された。具体的には、規制対象として「特定物質代替物質」が新設され、キガリ改正の18種類のHFCが政令により指定された。また、2019年以降のHFCの生産・消費量の段階的削減値が定められるとともに、その製造には許可、輸入には承認(外為法)が義務付けられた。

次に、フロン排出抑制法(2001年の旧法:フロン回収破壊法を2013年に改正)の規制対象である「フロン類」には当初からHFCが含まれており、キガリ改正に合わせるための同法の改正は不要だった。しかし、一方で、同法の下でフロン類の回収率は10年以上30%前後に低迷し、直近でも40%弱にとどまっている。さらに、1990年代後半に冷凍空調機器の冷媒が特定フロンからHFCに転換されたため、2005年以降HFCの排出量は急増している。2017年度の排出量の変化率は2005年度比で251%に上り、また、冷凍空調機器からの排出量がHFC全体の92%を占めた。他方で、地球温暖化対策計画(2016年5月)は、業務用冷凍空調機器の廃棄時のフロン類の回収率目標を2020年度は50%、2030年度は70%と定めている。

そのため、フロン排出抑制法の改正案が2019年3月に国会提出された。それは、業務用冷凍空調機器の廃棄時にフロン類回収済み証明書の交付、建物解体時に当該機器の有無の確認記録の保存、当該機器の引き取りの際に、フロン類回収済み証明書の確認と、確認できない機器の引き取りの禁止などを定めている。

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