フォーラム随想世界人口の推移、そして将来

2019年08月16日グローバルネット2019年8月号

自然環境研究センター理事長・元国立環境研究所理事長
大塚 柳太郎(おおつか りゅうたろう)

人口はどの国にとっても社会経済の根幹に関わっており、人口とその増減、人口の性・年齢構成、さらには出生率や死亡率は基本的な特性として重視されている。

最近の日本では、少子高齢化と人口減少が大きな負の要因と見なされ、その原因である出生率の低下をいかに食い止めるかに関心が寄せられている。ヨーロッパには、人口減少が1900年代後半に始まった国もあるが、出生率の低下が日本ほど急激ではなく移民も受け入れているためか、それほど深刻な状況にはなりそうもない。

一方、世界全体では人口は増加を続けており、人口増加はとくに環境の持続性を妨げる負の要因と見なされている。環境への負荷の総量は、当然のことながら、一人当たり環境負荷量と人口との積であり、地球全体として、一人当たり環境負荷量も世界人口も増加の一途をたどっているからである。

国連人口部が、世界の人口データの収集と分析を行い、1950年以降の国別・地域別の人口や人口増加率などを発表してきた。最新の発表は本年6月17日になされた。その中には、2019年および2020年の人口や2015~20年の年平均人口増加率とともに、2100年までの予測値も含まれている。

1950年以降の世界人口の推移を見ると、1950年に25億3600万人だったものが、2019年に77億1300万人、2020年に77億9500万人になっている。世界保健機関によると、2019年の世界全体の男女込みの平均寿命は72歳なので、一生の間に人口が3倍以上に増えたことになる。

この70年間の世界人口の年平均増加率は、最初の推計値である1950~55年の1.78%から上昇し、1965~70年に2.05%に達した後は低下を続け、2015~20年には1.09%になっている。

実は、人口増加率が2%を超えた直後の1974年に、世界136ヵ国の代表が参加した世界人口会議がブカレストで開かれ、「人口爆発」という危機意識が共有され、家族計画に基づく出生率の低下を目指す世界人口行動計画が策定された。

その後、人口増加率は低下した。しかし、人口増加数は人口増加率だけでなく基になる人口にも影響される。実際、増加率がピークの2.05%だった1965~70年の5年間の人口増加数が3億6000万人だったのに対し、5年間の人口増加数が最も多かったのは、増加率が1.79%だった1985~90年の4億5600万人なのである。

同様の理由で、現在(2015~20年)の人口増加率が1.09%でも、5年間の人口増加数は4億1500万人で、ブカレスト会議のころよりも多いのである。

将来予測にも触れておこう。世界人口は2050年に97億3500万人、2100年に108億7500万人になると予測されている。

地域による違いは大きい。人口の急増が最初に始まったヨーロッパでは、人口増加率は20世紀に低下を始めており、2020年の人口のピークを過ぎると負に転じ、人口は減少するのである。世界人口の6割を占めるアジアも増加率は低下を続けており、2055年ころにピークを迎えた後、人口が減少すると予測されている。

言い換えると、今後の世界人口の増加のほぼすべてはアフリカで生じ、アフリカの人口は2020年の13億4100万人から、2100年には42億8000万人へと3倍以上に増加する。ただし、人口の急増が遅く始まったアフリカの人口がとくに稠密とはいえない。アフリカの人口密度をアジアと比較すると、現在はわずか3分の1程度で、2100年になってもまだ低いからである。

私たちは、地球温暖化をはじめとする地球環境問題を考える上でも、世界人口の状況を的確に把握する必要があろう。

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