環境条約シリーズ 329船舶リサイクル条約と国内法

2019年08月16日グローバルネット2019年8月号

前・上智大学教授 磯崎 博司(いそざき ひろじ)

ホンコン条約(船舶リサイクル条約)は、船舶の安全かつ環境上適正な再資源化解体(リサイクル)のため、500総トン以上の船舶に対して、有害物質の使用量と場所を記した一覧表の作成および維持管理を義務付けるとともに、許可施設以外での船舶リサイクルを禁じており、15ヵ国以上、合計船腹量が40%以上、リサイクル船腹量が合計船腹量の3%以上という要件が達成されてから24ヵ月後に発効する(本誌2006年11月、10年1月)。

2019年6月下旬の締結国はノルウェー、コンゴ共和国、フランス、ベルギー、パナマ、デンマーク、トルコ、オランダ、セルビア、日本、エストニアおよびマルタの12ヵ国であった。EUにおいては、その内容を反映したEU規則1257/2013がすでに適用されているため、EU諸国による締結が増えると思われる。

日本は、ホンコン条約について2018年4月の国会承認を経て2019年3月27日に加入書を寄託した。併せて、船舶リサイクル法(2018年6月20日、法律第61号)および同法施行令(2019年1月23日、政令第11号)が公布されており、この条約の発効に備えた準備が進められている。

それらの下では、ホンコン条約に則して、国外航路に従事する対象船舶の所有者には、有害物質一覧表の作成・維持および国土交通大臣による確認と、リサイクル事業者への当該船舶の譲渡しに際して同大臣による承認が義務付けられる。また、リサイクル事業者には、主務大臣による施設ごとの許可と、対象船舶の譲受けに際して船舶リサイクル計画の作成および同大臣による承認が義務付けられる。

ところで、日本海事協会は、ホンコン条約の発効に先駆けて、リサイクル施設によって作成された船舶リサイクル計画が条約に適合していること、それに従ったリサイクルが実施されていることを確認し、施設ごとに適合鑑定書を発行している。これまでに、インド(30)、トルコ(2)、中国(1)のリサイクル施設に対して適合鑑定書が発行されている。

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