特集/シンポジウム報告 動き出した自治体~先進自治体の「プラごみゼロ宣言」~プラスチックの持続可能な利用を目指す東京都

2019年09月17日グローバルネット2019年9月号

東京都環境局資源循環推進専門課長
古澤 康夫(ふるさわ やすお)さん

 いまや世界は脱プラスチックごみ社会の実現に向けて動き出しています。  日本国内でも、ようやく一部の自治体が容器包装をはじめとするプラスチックごみの削減に着手し、さまざまな取り組みを進めています。  本特集では、リユース食器のレンタル事業を確立し、リユース食器レンタルの普及活動を行っているNPO 法人 スペースふう が主催し、今年7月11日に東京都内で開催された「第13 回ふうネットサミット『プラごみゼロ宣言』 ~先進自治体から学ぶ!! ともに学ぼう!!」での基調講演および「プラごみゼロ」を目指して取り組みを進めている先進自治体からの報告を紹介します。

 

東京都は廃棄物審議会でプラスチックの持続可能な利用について議論をし、2019年4月に中間答申を得ました。プラスチックの問題を、二酸化炭素(CO2)、海洋プラスチック問題、中国の廃プラスチック輸入制限以降の不適正な処理問題の三つの観点で捉えています。私からはCO2削減の観点から話をさせていただきます。

2050年にCO2排出実質ゼロ

2018年10月に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が取りまとめた「1.5℃特別報告書」では、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較してプラス1.5℃にとどめるには、2030年までにCO2排出量を2010年比で45%削減、さらに2050年前後には実質ゼロにする必要があるとしています。そのためには私たちの経済社会を大きく変えなければいけないと認識しています。

東京都は2019年5月、知事が「2050年までにCO2の排出実質ゼロを目指す」と発表しています。省エネ、再生可能エネルギー利用の推進に加えて、資源の利用の仕方も考えなければいけないと位置付けています。プラスチックの問題も、プラスチックだけが問題なのではなく、私たちの資源の利用全般に関わる問題だと思います。

12月に具体的戦略を発表へ

CO2実質ゼロのプラスチックの利用について、審議会でも議論していただきましたが、プラスチックの消費量そのものを減らす、再利用しながら使っていく、化石燃料ではなく、バイオマスから作ったプラスチックの利用などが実現できれば、CO2の排出はゼロになるはずです。しかし、それを現実の社会でどうやったら実現できるのか、まだ誰も答えを持っていないのではないかと思います。

都では、2050年のCO2実質ゼロに向けた具体的な戦略を今年の12月までに策定して発表する予定です。その中では、電気自動車や燃料電池車などの利用のほか、プラスチックの持続可能な利用も一つのテーマとして大きく取り上げる必要があると思っています。

都主催イベントでの使い捨てのプラスチックカップはゼロを目指す

国のプラスチック資源循環戦略では、2030年までにワンウェイのプラスチックを、これまでの努力を含め累積で25%削減し、プラスチック製品の60%をリサイクルまたはリユースするとしていますが、都ではこれに加えて2030年度までに家庭や大規模オフィスビルから排出されるプラスチック廃棄物類の焼却量を40%削減する目標も掲げています。

都内のプラスチック廃棄物は一般家庭や大規模オフィスビルから出るものを足すと約80万tと推計しています。そのうち焼却に回っている70万tを40万tぐらいに減らしていくのが目標です。

都の今年度予算でプラスチック関連事業では、プラスチックの3Rのための新たなビジネスモデルを民間から公募し、現在選定作業中です。来年に控えている東京2020大会でも使用済み製品のリユースやリサイクル、使い捨てプラスチックの削減に取り組んでいかなければならないと思っています。

また、東京都主催のイベントでは使い捨てプラスチックの削減、使い捨てプラスチックのカップについては2020年度を目途に使用ゼロを目指していきたいと思っています。

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