INSIDE CHINA 現地滞在レポート~内側から見た中国最新環境事情第56回 移動発生源(自動車)による環境汚染

2019年10月15日グローバルネット2019年10月号

地球環境研究戦略機関(IGES)北京事務所長
小柳 秀明(こやなぎ ひであき)

中国移動源環境管理年報(2019)

去る9月4日、中国生態環境部は「中国移動源環境管理年報(2019)」(以下、「年報」という)を発表した。移動源とは自動車、オートバイ、航空機、船舶、ディーゼル機関車等のほか、オフロードで使用される移動可能な工事用機械、農業用機械、ディーゼル発電機等を指す。移動発生源と呼んだ方が日本人にはわかりやすいだろうか。

この年報は2010年11月に初めて公表されて以来、今年でちょうど10回目になる。当初は「中国自動車汚染防止対策年報」と称して自動車(低速車やオートバイを含む)のみを取り扱ってきたが、次第にその他の移動発生源に関する情報も充実させるようになり、今年から年報の名称も「自動車」ではなく、上述のように「移動源」の名称に変更した。年報の構成は次のようになっている。

第1部 全国の自動車保有量

第2部 自動車の環境影響(注:汚染物質排出量)

第3部 新生産自動車の環境管理

第4部 使用過程車の環境管理

第5部 車用燃料の環境管理

第6部 オフロード移動源の環境管理

第7部 運輸構造の調整

ここでは年報のポイントを紹介することとしたい。

全国の自動車保有量

ここまではわかりやすさを優先して、何の注釈も付けずに「自動車」と書いてきたが、中国の分類方法では「機動車」(エンジンの付いている車両)の大分類の下に、自動車、低速車およびオートバイの3種類に分類されている(表1)。

2018年の全国機動車保有台数は3億2,700万台で、そのうち自動車は2億4,000万台(75.2%)であった。自動車について燃料類型別にみると、ガソリン車が圧倒的に多く88.7%を占め、次いでディーゼル車9.1%で、新エネルギー車、天然ガス車等のガス車はそれぞれ1.1%、0.2%にすぎない。

中国は2009年に米国を抜いて初めて世界一の自動車生産販売大国になり、以降10年間連続して世界一の座を占めている。この間全国の自動車保有台数も2009年末に6,200万台だったのが、4倍近く増加して2018年末には2億4,000万台に増えた。

自動車からの汚染物質排出量

2018年、全国の機動車から排出された主要汚染物質の量は、荒い計算結果によると一酸化炭素3,089.4万トン、炭化水素368.8万トン、窒素酸化物562.9万トン、粒子状物質44.2万トンであった。このうち自動車からの排出量は物質により多少異なるが、80~90%以上を占めている。

自動車について燃料類型別にみると、ガソリン車から排出される一酸化炭素は2,501.9万トン、炭化水素は251.6万トン、窒素酸化物は139.3万トンでそれぞれ自動車からの排出総量の87.5%、77.0%、26.7%を占めている。一方、ディーゼル車から排出される窒素酸化物および粒子状物質はそれぞれ371.6万トン、42.2万トンで自動車からの排出総量の71.2%、99%以上を占めている。ディーゼル車の保有台数が自動車全体の9.1%しか占めていないにもかかわらず、窒素酸化物および粒子状物質の排出割合が非常に高くなっているのが特徴だ。

なお、ディーゼル車のうち86.5%が貨物車である。そして、詳しい分析によると、自動車保有量のわずか7.9%しか占めないディーゼル貨物車が、窒素酸化物排出量の60.0%、粒子状物質排出量の84.6%と高い割合を占めているということが問題視されている。このため、2018年12月には国務院の同意を得て生態環境部等11部門は合同で「ディーゼル貨物車汚染防止対策攻略戦行動計画」を策定して、特別な対策を実施している。

オフロード移動源からの汚染物質排出量

主要なオフロード移動源としては、工事用機械、農業用機械、船舶、鉄道のディーゼル機関車、航空機等が挙げられる(表2)。

2018年、オフロード移動源から排出された汚染物質の量は、二酸化硫黄59.5万トン、炭化水素76.2万トン、窒素酸化物562.1万トン、粒子状物質44.5万トンであった。二酸化硫黄の排出量は船舶からの排出がほとんどで58.8万トンであった(注:硫黄分を含む重油を主たる燃料として使用しているため)。炭化水素は工事用機械44.5%、農業用機械40.0%、船舶13.7%の順であった。窒素酸化物は工事用機械34.2%、農業用機械32.5%、船舶29.2%の順であった。粒子状物質は農業用機械41.6%、船舶31.5%、工事用機械25.2%の順であった。

機動車(自動車)とオフロード移動源からの汚染物質排出量を比較したものが表3である。窒素酸化物および粒子状物質については、オフロード移動源からの排出量が機動車とほぼ同じであり、オフロード移動源の対策が重要であることを物語っている。

10年間の変化の比較

10年前の年報と比較してこの10年間の変化を整理してみた(表4)。

機動車および自動車保有台数はこの10年間でそれぞれ2倍、4倍近く増加しているが、推計された汚染物質排出量は(排出ガス規制の強化、燃料油の改善等により)横ばいか2割以上減少していることがわかる。

その他、年報では年々増加する貨物の輸送は道路運送に大きく頼っており、道路運送が76.9%を占めていると指摘している。環境への影響が大きい道路運送から鉄道等へのモーダルシフトが必要であるが、2018年に策定された青空保護勝利戦3年行動計画では、鉄道輸送量を3年間で30%以上増加させることを目標にしている。最近の中国生態環境状況公報によれば2018年は9.1%増加したと報告されている。

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