特集/イベント報告 Refill Japan オンラインカフェ Vol.3「脱プラ、脱使い捨ての行方(2) ~ウィズコロナ時代の脱プラ・脱使い捨てのアクション~」繰り返し使える食器や容器を使った「エコテイクアウト推進事業」

2020年10月15日グローバルネット2020年10月号

岡山県真庭市環境課
藤田 浩史(ふじた ひろし)さん

新型コロナウイルスのパンデミックにより、使い捨て容器や製品の増加、回帰の傾向が見られます。こうした状況の中で、7月1日に日本でもレジ袋の有料化がスタートし、ウィズコロナの時代に「脱使い捨て」社会実現に向けた自治体や企業の取り組みが進んでいます。  本特集では、8月7日に開催されたオンラインセミナー「Refill Japan オンラインカフェvol.3『脱プラ・脱使い捨ての行方(2)~ウィズコロナ時代の脱プラ・脱使い捨てアクション』」(主催:水Do! ネットワーク)における5人の発表と議論の内容を紹介します(2020年8月7日、オンラインにて)。

 

岡山県北にある真庭市は人口約4万4,000人、世帯数1万7,700世帯(2020年8月1日現在)の典型的な中山間地域です。市のほとんどが山林で、木材を発電の燃料としても使っており、国の「地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりを目指す地域」であるバイオマス産業都市に選ばれています。また、生ごみをそのまま焼却処分するのではなくメタン発酵させて液体肥料として再生させる取り組みも始めています。

エコテイクアウト推進事業

そのように、環境や地域内の資源循環に力を入れている真庭市で、2020年5月にエコテイクアウト推進事業を始めました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、イベントなどが軒並み中止となった中、コロナ禍でもできる取り組みをと考えたのがこの事業です。ちょうど外出の自粛や、テイクアウトが真庭市でも徐々に増えてきたので、テイクアウトに使われる使い捨てのプラスチック容器を少なくする方法はないかと考えたところ、たまたま市の施設で使っていた食器があったので、それをリターナブル(再使用)容器として使ってもらえないかと飲食店と話をしてスキームを考えました。

この事業では市は、ワンウェイのプラスチックを削減し、その取り組みをPRできます。また、簡単に物を捨てない生活スタイルを提案することもできます。

実践店に配り、貼ってもらっている共通のPOP

飲食店はリターナブル容器だけでなく、マイ皿、マイボトルなども受け入れて商品を提供することで、「エコなお店」というイメージアップ、従来プラスチック容器に掛かっていた経費削減、それから食器を返却に来ることによるリピート率アップで売り上げアップ、などの効果が期待できました。

また消費者については、「エコなテイクアウトがしたい」という意識の高い方もかなりいらっしゃるだろうという見込みで始めました。最初は何かインセンティブを出した方がいいと考え、持ち帰り用のバッグを市が作り、飲食店に渡してお客様にプレゼントするという取り組みも実施しました(現在は在庫が無くなり終了)。

このような取り組みが珍しかったということもあり、メディアでも大きく取り上げられ、かなり反響がありました。最近は実践店が25店舗に増えたので、共通のPOPを作って(写真)実践店に配り、貼ってもらっています。

衛生面では、お客様が食器を洗ってから返し、お店が再度洗いますので、リスクは通常の容器と変わらないと思います。今のところマイ容器を持参する人は意識の高い方が多く、汚いマイ容器を持ってきてお店にクレームを言うという話は聞いていません。衛生面の問題はないと思っています。

行動経済学の理論を活用してストローの使用が9割減

実践店の中の一店舗で、「小さなきっかけを与えて、人の行動を変える戦略」である行動経済学のナッジ理論(※米国シカゴ大学の行動経済学の第一人者リチャード・セイラー教授が提唱した理論。同氏が2017 年にノーベル経済学賞を受賞したことによって、世界中で注目を集めることとなった)を活用し、ストローの使用を減らすことができないか、実践していただきました。注文する所に「環境保護のためプラスチック製ストローは使いません?ストローが必要なお客様はお声かけ下さい。紙ストローをご用意しております」というメッセージを置いたところ、「ストローがほしい」と言ったお客様は1割ほどまで減ったということです。

お皿の貸し出しから始めたエコテイクアウトですが、少し幅を広げてこのような手法も有効だと思っています。

プラごみ削減からごみの出ない生活に

実践店は楽しんで実践してくださっている感じです。プラスチックごみ削減のPRという市のニーズと、売り上げを増やしたい、コストを下げたいという飲食店のニーズが合致しました。プラスチックごみを削減していくんだという大義があり、お店の方の考え方と一致したのでスムーズに進んだと思います。

意識の高いお店が多く、エコテイクアウトをさらに提案していますが、断られるとか衛生面についてのクレームはほとんどありません。お絞りや割り箸の提供もやめようかと検討していたり、「おひつで持ち帰りもOK」と強くPRしている郷土料理のお店もあります。マイ容器でもきれいに盛り付けて入れてくれる店もあります。環境に良いから協力するというより元々要らないよね、というお客様も結構多いようです。

ごみの総量削減が第一で、次にきちんと分別し、資源としてリサイクルするという流れが重要です。真庭市では、ごみ処理費が年間7億円、一方ごみ処理手数料として入るのは7,000万円です。ごみ処理費用に対し、利用者から十分にお金をいただいていない現状があります。今のままだとごみ袋代が高くなりますよ、と経済的側面についても、利用者に伝えながら、プラスチックごみだけでなく、ごみ全体を減らす、ごみの出ないライフスタイルを実践していただきたいと思っています。

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