特集/イベント報告 Refill Japan オンラインカフェ Vol.3「脱プラ、脱使い捨ての行方(2) ~ウィズコロナ時代の脱プラ・脱使い捨てのアクション~」コスメで実現するパッケージレス

2020年10月15日グローバルネット2020年10月号

株式会社 ラッシュジャパン Earthcareスーパーバイザー
窪田 とも子(くぼた ともこ)さん

新型コロナウイルスのパンデミックにより、使い捨て容器や製品の増加、回帰の傾向が見られます。こうした状況の中で、7月1日に日本でもレジ袋の有料化がスタートし、ウィズコロナの時代に「脱使い捨て」社会実現に向けた自治体や企業の取り組みが進んでいます。  本特集では、8月7日に開催されたオンラインセミナー「Refill Japan オンラインカフェvol.3『脱プラ・脱使い捨ての行方(2)~ウィズコロナ時代の脱プラ・脱使い捨てアクション』」(主催:水Do! ネットワーク)における5人の発表と議論の内容を紹介します(2020年8月7日、オンラインにて)。

 

ラッシュは1995年に設立されたイギリス発のナチュラルコスメブランドで、現在世界48の国と地域に900以上の店舗を展開しています。

ラッシュの商品はフレッシュでオーガニックな野菜や果物、高品質のエッセンシャルオイルを使用して可能な限り合成保存料に頼らない方法で一つひとつ丁寧に手作りしています。スキンケアやヘアケアの全商品はベジタリアンで、そのうちの約9割は動物性の物を一切使わないヴィーガンの対応です。また、私たちは化粧品における動物実験に反対しています。

私たちは人権、動物の権利、環境問題、復興支援などさまざまな社会の課題に目を背けません。社会の課題は企業にとっても課題であり、私たちはそれに立ち向かう責任があるという考え方を信念とし、ビジネスの拡大とともにその考え方が多くの人たちに広がると信じています。

環境への配慮は常にビジネスの中心に

環境への配慮は、私たちの日々の意思決定において重要な要素となっています。

「パッケージは可能な限り使用せず、使用する場合も最小限にとどめる」―私たちはこの信念からパッケージに対し、①ごみになるパッケージを排除②バージンプラスチックを不使用③使用したプラスチックはリサイクル、という三つを柱としています。当初は石油由来のプラスチックの使用量を減らすためにプラスチックの削減に取り組んできましたが、今やその目的はプラごみ対策や温暖化防止対策に変わってきています。

一般的にコスメというのはパッケージや価格で高級感を演出する方が売れるとされているのではないかと思います。実際にどんなに素晴らしい美容液でも価格が安すぎると売れないと聞いたことがあります。しかし、私たちはごみになるパッケージにお金をかけるよりは商品の価値を高める原材料を調達することを選びます。

ラッシュに来ればパッケージのないコスメを選ぶことができる、と認知されていくことは喜ばしいことです。そして、環境に対する意識が社会で高まっていく中で、お客様が欲しいと思ったときに「選べる」という価値を提供していくのが私たちの責任だと思っています。私たちはパッケージにおけるコスメティック・レボリューションを続けていきます。

脱プラ・脱使い捨ての具体的事例

ラッシュではパッケージのない商品を「ネイキッド商品」と呼んでいます。これは、「ごみになるパッケージを排除」というラッシュの信念にうたわれているものの究極な形といえます。もともと、日本以外の国ではネイキッド商品が展開されていたのですが、日本では薬機法の関係などでなかなか実現できず、2016年に何とか開始することができました。

過去1年間の実績では、ネイキッド商品はアイテム数で全体の56%を占めています。また、販売個数においては、全体の46%です。代表格の固形シャンプーであるシャンプーバーはラッシュの共同創立者の一人であるモー・コンスタンティンが発明しました。シャンプーは通常液体なのですが、これを固形にすることで水の使用量を削減し、保存料も無くすことができます。それによって、容器のコストを原料にかけることができ、ごみも減らせるという画期的な商品です。シャンプーバー1個の使用回数は液体シャンプーの250gサイズのボトル3本分です。ラッシュジャパンの2019年の1年間の販売個数は33万個だったのですが、それをプラスチックボトルの使用量に換算するとなんと26tになります。

パッケージを無くすことでプラスチック廃棄物の削減に貢献できます。2005年から世界中のラッシュで累計4,700万個のシャンプーバーを販売することで、3,400tのプラスチック削減に貢献したといえます。仮に一人が一年間毎日シャンプーバーを使うとすると、年間364gのプラスチック使用を削減できる計算になります。日本に住んでいる人の使い捨てプラスチックの量は一人32㎏といわれているので、その1%に過ぎませんが、インパクトが小さくても、続けることで大きな変化につなげる好例だと思います。

一方、ディスプレイについては、例えば液体のシャワージェルとボディソープと、ネイキッドのボディソープは並べています。一緒に並んでいることで、お客様が自然に「これは何だろう?」と興味を持っていただけます。

また、梱包については通信販売も含め、今ではすべてネイキッドスタイルです(写真)。

梱包はすべてネイキッドスタイル

100%再生プラスチックの容器

固体の商品はネイキッド商品としてパッケージを削減できるのですが、液体のものには必ず容器が必要になります。どうしても必要な場合にだけ容器を使うのですが、その場合は、お客様から回収した容器を私たちの容器に戻すというクローズドループのリサイクルを行っています。

2008年に使用を始め、2010年から店頭での回収を開始しました。容器の厚みを減らすことで、プラスチック使用量を削減する減量化も行い、現在も同じ容器を使い続けています。

空容器回収プログラムによる容器回収率は、昨年実質では29.4%で、プラスチックの重量では21tになります。回収率はここ数年30%前後で推移しており、多くのお客様がこの取り組みに共感してくださっているのを感じます。

私たちはもっとたくさん空容器回収をしたいのです。しかし、持ち込まれるものの中には、汚れたものや異素材のラベルが貼られたままのものが多いのが現状です。汚れたものはリサイクルできず、ごみになってしまうということをもっと多くの人に理解していただきたいと心から思っています。

気になっている問題・課題~新しいライフスタイルを

廃プラ輸出規制の影響で、せっかくリサイクルしても使いきれないほどたくさんのプラスチックがあるということが気になっています。また、コロナの影響で使い捨てが増えたということも心配です。

さらに、再生プラ活用のハードルが高いことも問題です。例えば、再生プラを使った成型品・製品の品質に対する寛容性が、一般的に足りないのではないかと思っています。

ラッシュでも、再生材100%容器を使い始めた際、容器が変色したり、商品の色がきれいに見えなかったりくすんでしまったり、残念なことになってしまい、これでいいのかと思いながら販売していたのですが、すぐにそれは作られた価値観であり、本質的なものではないということに気付きました。既成概念にこだわらないということがもっと求められると思います。

また、技術面では再生プラは材料としてとても扱いにくくコストもかかってしまうので、多くの企業は手掛けたがらないのですが、もっと行政からの補助金なども入らなければ、企業だけの努力ではどうにもならないと思います。

さらに、再生プラの使用用途が限られていることも課題です。再生プラで思い浮かぶのは物流で使用されるパレットくらいなのですが、もっと材質や色で工夫すればデザイン的にもカラフルなものができ、需要ができると思います。

新型コロナウイルスによって、当たり前だった生活の見直しを余儀なくされています。テイクアウトなどで使い捨ての需要がますます加速していますが、使い捨てを無くせるアイデアはたくさんあるはずです。今こそ、使い捨ての価値観に依存しないライフスタイルに変えていくことが大事なのだと思います。新しいライフスタイルへの転換を実現させましょう。

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