特集/イベント報告 Refill Japan オンラインカフェ Vol.3「脱プラ、脱使い捨ての行方(2) ~ウィズコロナ時代の脱プラ・脱使い捨てのアクション~」消費と生産のトランジションへ

2020年10月15日グローバルネット2020年10月号

(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域 ディレクター/上席研究員
堀田 康彦(ほった やすひこ)さん

新型コロナウイルスのパンデミックにより、使い捨て容器や製品の増加、回帰の傾向が見られます。こうした状況の中で、7月1日に日本でもレジ袋の有料化がスタートし、ウィズコロナの時代に「脱使い捨て」社会実現に向けた自治体や企業の取り組みが進んでいます。  本特集では、8月7日に開催されたオンラインセミナー「Refill Japan オンラインカフェvol.3『脱プラ・脱使い捨ての行方(2)~ウィズコロナ時代の脱プラ・脱使い捨てアクション』」(主催:水Do! ネットワーク)における5人の発表と議論の内容を紹介します(2020年8月7日、オンラインにて)。

 

なぜ海洋プラスチック問題が注目を集めたのか

私は2007年頃からG7やG20の資源効率性に関する国際プロセスに関わってきたのですが、その中で海洋プラスチック問題は、廃棄物問題を国際問題として取り上げるのに効果的だったという印象を持っています。

廃棄物問題を気候変動と結び付けると、廃棄物セクターは温室効果ガス(GHG)全体の5%程度の貢献をしている程度であり、全体への貢献度からいうと大きくなく、あまり強い説得力を持ちませんでした。

資源問題と結び付けると、例えばアジア太平洋地域の資源消費量は2010年に比べて、2050年には3倍になるのではという予想がある一方で、資源の問題というのは全体として資源効率を重要な課題として位置付けることには成功しましたが、行動を変える大きなきっかけとしては弱かったと思っています。

では、廃棄物問題を国際化し、取り組みの優先順位を上げるにはどうすべきか。プラスチックの生産と消費は1970年代以降急拡大し、プラスチック問題と海洋ごみ問題については、海洋生物への影響、プラスチック汚染や海洋ごみ問題とうまく結び付いたと思います。

さらに、マイクロプラスチック問題など、環境中でプラスチックがどのように振る舞っているのかという理解がここ最近進みました。温暖化に比べると、プラスチックの話はライフスタイルに結び付けやすく、さらに比較的最近の現象なので、取り組みやすいのではないでしょうか。

国際協力が不可欠

この問題は先進国だけで取り組む問題ではなく、途上国の問題としても大きな問題だと思います。

ある論文(Geyer et.al.2017)によると、1950年代から2015年までに発生したプラスチック廃棄物の総量63億tのうち、焼却されたのは12%、そして9%くらいはリサイクルされ、あとは埋め立てされるか、何らかの形で環境中に放出されたと考えられています。これは東南アジアなどから多くのプラスチックが排出され、海洋に流出しているという推計と一致します。

一方、同じ論文で2050年までに44%がリサイクルされ、50%が焼却されて6%が埋め立てされると推計しています。先進国はこれまで焼却やリサイクルなどを比較的適切に行ってきているので、その推計を実現するには途上国の状況を改善しなければならないのです。

さまざまな報告書が出され、国際的にも注目を集め、この問題は消費者に訴えかけるだけではなく、政策担当者や政治家などにも影響を与えています。実際、2019年10月、G20で2050年までに新たに海洋中に排出されるプラスチックをゼロにすることが合意されました。それに基づいて、G20参加国の取り組み状況について日本が中心となって取りまとめており、それを見るといろいろな政策案もできています()。規制や自主的な取り組みで使い捨ての製品を削減するなどの取り組みが進んでいるのですが、注目したいのは、新たなビジネスモデルなどの技術革新となるとあまり多くないという点です。これはたぶん、実際にやっていないというわけではなく、情報として収集できていない段階なのではないかと思っています。

また、「国際協力の推進」については、多くの国際協力が東南アジアに集中している状況です。途上国に対して支援して状況を改善していくための資金や人材は多いかもしれませんが、G20で合意した「2050年までに海洋プラスチックごみゼロ」まで行きつくには、相当な知恵や抜本的な改革が必要だと思っています。

ライフサイクル思考からトランジション思考へ

トランジションすなわち抜本的に社会経済の在り方を変える必要があります。この問題を解決していくための方向性としては、①発生抑制(プラスチック利用の削減へ向けた製品などの導入、②廃棄物削減(プラスチック利用製品の耐久性の改善など)、③エンドオブパイプ(フィルターの導入など)、④製品の規制(マイクロビーズを含む製品の製造規制など)⑤リサイクル(プラスチックの循環利用のガイドラインなど)などが挙げられます。

これまで主要なアプローチであったライフサイクルアプローチに加え、消費者に責任があるという考え方から、消費を変えるには、のようにインフラや制度、価値を変える必要があるという考え方に変えなければいけません。また、新たなビジネスモデルやサービスモデルを育成していくということも重要です。さらに、便利さ安さなどとは違う、それがかっこいい、楽しい、という新たな価値を基準に行動を決めるということが重要だと思っています。

持続可能な消費への変化の方向性~変わらない方向性

「コロナ後の社会」は、表のような消費の前提となるような考え方や経済・産業構造の変化を強めていく傾向にあるのではないかと思っています。

例えば、インフラについては、これまでは都市化とか消費が増大していくということが前提になり、物理的インフラをいかに効率よく造るかという考え方でしたが、物理的なインフラよりもデジタルなインフラ、ライフスタイルとビジネスをどう結び付けていくか、生活の質のための消費などが重視されていくと思います。また技術の面では、これまで例えば途上国に対しては技術移転をするんだという考え方から、社会をいかに革新的なビジネスやサービスを提供できるような状況にしていくかということに変わり、そういった変化が加速化していくと思います。

行動変容や意識向上というところから、システムやライフスタイル、制度が大きく変化するかもしれません。なかなか変わらないとしても、「変化の方向性は変わらない」と持続可能な消費と生産の研究に関する議論で感じています。

レジ袋有料化にしろ、海洋プラにせよ、廃棄物問題を考えるきっかけになったので、そこを切り開いていくことが重要ではないかと思います。

真庭市のエコテイクアウトの仕組みに参加する飲食店がとても楽しんでやっていることがとても重要で、さらにナッジを効かせる(行動の心理をうまく利用して変化させる)ことを理解されていることが素晴らしいと思います。ラッシュも新しい付加価値を提案されていると思いますが、その価値の評価の一つにプラスチックを使わないということを入れていくということが重要だと思います。

そういう方向で自治体や企業が連携していくととても大きな変化を起こせるのでは、と期待します。

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