INSIDE CHINA 現地滞在レポート~内側から見た中国最新環境事情第63回 第13次5ヵ年計画成果の見通し

2020年12月15日グローバルネット2020年12月号

地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長
小柳 秀明(こやなぎ ひであき)

コロナ禍で翻弄された2020年も間もなく終わろうとしている。今年は中国では第13次5ヵ年計画(2016~2020)の最終年であり、また、第14次5ヵ年計画と2035年に向けての長期目標(「遠景目標」と呼ばれている)策定準備の年でもあった。国務院新聞弁公室では、10月に一連の記者発表会を開催し、第13次5ヵ年計画期間中の中国の経済社会の発展に関する状況を紹介した。この中で10月21日には生態環境部の趙英民副部長(副大臣)から5ヵ年計画期間中の生態環境保護業務の状況について紹介された。

また、10月下旬に開催された中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)では第14次5ヵ年計画と2035年長期目標について審議され、11月3日に国営新華社通信を通じて5ヵ年計画と長期目標制定に関する建議が発表された。この建議では9月22日に習近平国家主席が国連総会で発表した「二酸化炭素排出量を2030年前にピークアウトさせる」ことを踏まえた「2030年前二酸化炭素排出量ピークアウトアクションプラン」の制定も提案された。

10 月26 日から29 日まで北京人民大会堂で開催された5中全会(出典:中国中央人民政府WEB サイト)

第13次5ヵ年計画期間の成果

趙英民副部長の記者会見内容から第13次5ヵ年計画期間中の生態環境保護分野における成果のポイントを拾ってみたいと思う。

1.9の拘束性目標は全面達成の見込み

第13次5ヵ年計画では生態環境保全面で9の重要な拘束性目標(強制的かつ固定的な目標で、国のマクロコントロールの意図を示しており、達成が義務付けられた目標)が定められたが、これらはすべて達成またはその見込みであると述べた。具体的には筆者作成のを参照していただきたい。これらの目標のうち、単位GDP当たりの二酸化炭素排出量の低減(目標値は5年間累計で18%低減)の目標は、今年5月に開催された全国人民代表大会の時点では「2019年末の段階では未達成」としていたが、今回の発表では2019年末に達成していた(18.2%低減)と発表している。

2.気候変動対応業務で顕著な成果

今年9月の国連総会で習近平国家主席は「中国は国家の自主貢献度を高め、更に有力な政策と措置を取り入れ、二酸化炭素排出量を2030年前にピークアウトさせ、2060年前に炭素中立(カーボンニュートラル)の実現に努力する」と述べたが、第13次5ヵ年計画期間中、中国は気候変動対応国家戦略を積極的に実施し、産業構造を調整し、エネルギー構造を最適化し、エネルギー効率を向上させ、排出量取引市場の建設を推進し、森林吸収量を増加させるなどの一連の措置を取った。

具体的には第一に、温室効果ガスの排出を効果的に抑制した。全国の単位GDP当たりの二酸化炭素排出量は持続的に減少し、二酸化炭素排出総量が急速に増加する局面からほぼ転換し、昨年末までに単位GDP当たりの排出量は2015年から18.2%減少し、5ヵ年計画の目標を前倒しで達成した。2005年比では48.1%減少した。非化石エネルギーのエネルギー消費に占める割合は15.3%に達した。

第二に、重点分野の省エネ業務が順調に進んだ。中国の一定規模以上の企業の単位工業増加値当たりのエネルギー消費は、2019年には2015年比で累計15%以上低下した。これは4.8億tの標準炭の省エネに相当する。省エネによりコストを節約し、約4,000億元(日本円で約6兆円)を節約した。中国のグリーン建築が都市の新築民用建築に占める割合は60%に達した。また、都市部の既存の住民居住建物の省エネ改造を通じて建物の運用効率を高め、人びとの居住環境を効果的に改善し、2,100万戸以上の住民に恩恵が及んだ。2010年以来、中国の新エネルギー自動車は急速に増加し、全世界の新エネルギー自動車販売量の55%を占め、現在では中国が世界で最も新エネルギー自動車保有量が多い国になった。

第三に、再生可能エネルギーが急速に発展した。5ヵ年計画期間中、再生可能エネルギー設備は年平均で約12%増加した。設備総量に占める再生可能エネルギー設備の割合は着実に上昇し、エネルギー転換の重要な要素となり未来の電力増分の主体となった。その中でも風力発電と太陽光発電などの新エネルギーの発展は迅速で、再生可能エネルギー発展の主体となっている。2019年までに新エネルギーが再生可能エネルギー設備の中で占める割合は55.2%に達し、水力発電設備は44.8%を占めた。

第四に、気候変動適応への主体的な活動が順調に進展した。気候変動適応分野への指導を強化し、28の都市で気候適応都市パイロット業務を展開した。また、3期合計6つの省区の81の都市で低炭素省市パイロット建設事業を展開し、気候変動と生態環境保護業務の統一協調を強化した。全国の気候変動対応業務機構改革と機能調整を完成した。(注:気候変動対応業務を国家発展改革委員会系統から生態環境部系統へと移管した一連の機構改革等を指す。)

第五に、世界の気候対策に積極的に参加した。多国間主義を堅持し、パリ協定の実施細則の包括的な成果を達成するよう推進した。他の国家と一緒に「一帯一路」による気候変動対応に係る南南協力計画を積極的に実施し、他の発展途上国の気候変動対応能力の向上を支援した。

第14次5ヵ年計画等の建議

公表された第14次5ヵ年計画と2035年長期目標制定に関する建議は、中国語で2万字を超える内容であるので、ここでは紙面の関係上気候変動対応に関係する部分についての要点のみ紹介することとしたい。

【グリーンで低炭素な発展の推進を加速】

国土空間の計画と利用管理を強化し、生態保護、基本的な農地、都市開発等の空間境界管理を実施し、人間の活動による自然空間の占有を減らす。グリーン発展の法律と政策保証を強化し、グリーンファイナンスを発展させ、グリーン技術革新を支援し、クリーン生産を推進し、環境保護産業を発展させ、重点産業と重点分野におけるグリーン化改造を推進する。クリーン・低炭素・安全・効率的なエネルギー利用を推進する。グリーン建築を発展させる。グリーンライフ創出活動を行う。二酸化炭素排出強度(注:単位GDP当たりの二酸化炭素排出量)を低減し、条件が整った地方の二酸化炭素排出ピークアウト率先行動を支援するとともに、「2030年前二酸化炭素排出量ピークアウトアクションプラン」を制定する。

以上のほか、生態環境保全に関して、①環境質の継続的な改善、②生態システムの質と安定性の向上、③資源利用効率の全面的向上――について具体的に提案されている。

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